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●百物語●

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 はだかの山田くんの体は……なんと…… 人体模型になっているんだ!
光田 千煕作
◆人体模型くん(2)◆
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 まず、心臓があるだろ。その両側を包むように肺。横隔膜(おうかくまく)があってその下には大きめな肝臓(かんぞう)がおさまっている。その下に胃袋。そしてぐにゃ〜っと無理やり詰めこんだような小腸・大腸。 本当に不思議なんだなあ。これは絵の具で描いたような絵じゃないし、アザや入れ墨(ずみ)なんかでもない。立体的でそれらしい色もついていて、本物の人体模型のようなんだ。 でも、山田くんはこのすごい体をあまりみんなにじっくり見せてくれないし、さわらせてもくれない。だから実のところ、どうなっているのかよくわからないんだ。 本当に、本物の心臓や胃がむき出しになっているのか?それらは血なまぐさい感じはしないし、かと言ってプラスチックで作ってあるような安っぽい感じもしない。理科室にある本物の人体模型だったら心臓や肺や胃袋が取り外しできるんだろうけど、生きている山田くんの場合はどうなのか? そんなふうに、いろいろ疑問はあるんだけどね……。 山田くんからは、プールのとき、いつもぴっちりと体育座りをして腕や足で自分の内臓をかくしていて、見られたくないんだなあという気持ちがひしひしと伝わってくる。だからだれも聞けないんだ。だれも「ね、さらわせてくれないかなぁ」なんて言えないんだ。みんなかなり気を遣(つか)っている。ある一人とその手下をのぞいてはね。 ある一人ってのはジャリ男のことだ。 ジャリ男だけは、平気な顔してこう言うんだよ。 「ねえぇん、山田くぅん。そのすてきなボディをさわらせてくれなぁい?ぶっちゅう〜!」 最後のぶっちゅう〜ってのは、投げキッスの音だ。明らかにジャリ男はふざけている。山田くんを困らせようとしている。山田くんはなんて答えていいかわからずにもじもじしている。 ジャリ男は学年一でかくて、力も強い。すもう部屋からスカウトが来そうな少年だ。だから、ジャリ男に逆らうヤツなんていない。 山田くんがいつまでももじもじ、いじいじしていると、ジャリ男は我慢できなくなる。山田くんをぶっ飛ばす。いや、自分の手ではぶっ飛ばさない。こんな弱っちいヤツをぶっ飛ばして先生に怒られるんじゃ、わりが合わんからな。 ジャリ男は自分の子分たちに言うんだ。 「いいな、山田をぶっ飛ばして来い。でも絶対に先生に見つかるんじゃないぞ。人が見てないところでぶっ飛ばせ。それでもだれかに見られたら、これはジャリ男の命令なんだ、なんか文句あっか〜って、目つき悪くして、あごに梅干しの種みたいなシワ作って言うんだぞ、いいな。うっしっし〜。」 と、いうわけで、山田くんはわりとひんぱんにジャリ男の子分にぶっ飛ばされていた。ときには顔にアザができたり頭にこぶができたりすりこともあった。けれども山田くんはこのことを先生にいいつけたりせずにだまっていた。 「どうしたの?そのアザ?」 なんて聞かれても 「あ、階段でこけたんです。」 なんて答えて、ごまかしてしまう。山田くんは自分のことで話がややこしくなって注目されるのはイヤだったんだ。なにしろ、目立たない平凡な人生を送るのが夢だったからね。   山田くんはおかあさんと二人暮らしをしていた。おかあさんは県立病院で看護師さんをしていた。山田くんの家は市営団地の三階で、その市営団地にはたくさんの小学生のいる家族が住んでいた。そこらをちょっと歩けば顔見知りの子に出会うし、公園にいけば、いつもうじゃうじゃと子どもがいる。 山田くんはそういう「人並み」の生活が、ちょうどいいと感じていた。だけど、かと言って、うじゃうじゃ子どもがいる公園で遊ぶのはあまり好きではなかった。彼は自分の部屋でマンガを読んだりゲームをしたりして一人で過ごすことが多かった。そう、山田くんは孤独(こどく)を愛していたんだね。 やっぱりそれは彼の体の秘密のせいかな。 どんなに「人並み」を愛したって、やっぱり彼は普通にはなりきれないようなんだ。どうしてかな。 普通に町を歩いたり、教室で過ごしたりするだけならば、山田くんほど目立たずに普通に何事もなく過ごす子なんて、いないのにね。 三年、四年、五年と子どもたちは進級するにしたがって、体が大きくなるだけでなく、いろんなことを考えるようになる。心も複雑になってくる。大人びたふるまいをするようになる。 体育の授業でプールに入るとき、みな、ちらりとでも山田くんの体に視線を送る、なんてことしないようになる。「こんなの当たり前」って顔で過ごすことが上手になる。 先生も教室でちょくちょくこんな話をするものね。 「人を見かけで差別しては、いけません」 そうだ、その通りだよなって子どもたちも思っている。そのくせ陰ではこう言ってるんだ。 「ね、見た、見た〜?山田くんのはだか。今日プールのときさ、あたし隣にならんじゃったの。もう、心臓がバコバコいっちゃったよ」 「あれ、本当の人体模型になってるのかなぁ。」 「キモイよね〜」 「うん、不気味〜。あれさあ、心臓とか自分の手でガバッとつかんで取り出せるんだって」 「えぇ!うそ〜!」 「本当だよ、サッちゃんが見たんだって」 「えぇ?いつ?」 「夜中の十二時に、いつも鏡に向かってやってるんだって」 「うあぁ!いつもあんなに真面目そうな顔してるのに?」 「あの真面目そうな顔が不気味なんじゃない。いつも腹かくしててさ。きっと夜中の十二時になると、ウチらの部屋なんかにすうっと立ってぐぐっと心臓つかみだして、ほら〜……なんてぇ!」 「キャーッ!」 なんてこんな会話、何度、学校帰りの道や校舎の裏で交わされただろうか。 もちろん、そんな会話は山田くんが近くにいない所で交わされるに決まっている。こんな話をする子たちだって、決して山田くんのことがきらいなわけじゃないし、まあ、罪のない怪談話を楽しむような気分だったんだ。 皮肉なことに怪談話ってのは、いつの時代にも人気があるもので、山田くんについてのこういううわさ話は、子どもたちが大きくなって話がうまくなり想像力がたくましくなるにつれて、どんどんふくらんで陰(かげ)で流行していった。 山田くんたちが五年生になったある日のこと。三人の女の子たちが、また学校帰りに話していたんだ。 「この前さ、暗くなってから、山田くんが一人で団地の中央公園のぶらんこをしてたんだって」 「わあ、不気味〜」 実を言うと、孤独を愛する山田くんは、本当に、子どもが帰ってしまった夕暮れの中央公園でひとりでぶらんこ遊びをしていたことがあったのだ。ぶらんこをしながらおかあさんの帰りを待っていたんだ。 「ひとりで〜?」 「ギィコ、ギィコ、こぎながらさ、胃袋とか腸とか引っ張り出していじってるの。それでぇ、あの真面目そうな顔がさっと変わってね……」 「ひぇ〜、変わって?」 「こういう顔で……ヒィっヒィっヒィっ……」と、その子は両目の目尻を指でぎゅっとつり上げ、口にも指をつっこんで口さけ女みたいな形に引っ張り、気持ちの悪い笑顔を作って見せるのだ。 「キャーッ!」 ってな具合に、話を聞いていた女の子たちは向きを変えて逃げようとした。 ところがその時、女の子たちは初めて気がついた。向きを変えた目と鼻の先に……山田くんが、立っていることに。 「あ、山田くん」 女の子たちは、かなり気が動転して、それ以上なんと言っていいかわからなかった。山田くんもだまっていた。いつもと同じ、真面目そうな顔をくずさずに。 女の子たちのは困ってしまったが、三人いっしょだとずうずうしくなるものだ。とうとう三人のうちの一人が、思い切ってたずねた。「今の話、聞いてた?」 「別に……」 「本当?本当は、聞いてたんでしょ」 そうだ、山田くんは聞いていた。だって、たまたま三人のすぐ後ろを歩いていたんだ。みな市営団地に住んでいる子たちで、通学路が同じだったから。 「聞いてたんでしょ、ね、ね」 「あ、ちょっとだけ、聞こえちゃったから……」 小さな消え入るような声で、山田くんは答えた。「女の子の話を盗み聞きするなんて、サイテー」 口さけ女の顔を作った女の子が、はき捨てるように言った。ほかの二人はそれはひどいんじゃないかって思ったけど、仲間同士なので何も言えなかった。「サイテー、早く行ってよ。先生に言いつけたりしないでよね」口さけ女の顔を作った子は、ずうずうしく威張(いば)って言った。 山田くんは、何も言わずに、その子たちの先を走って帰った。  (つづく)  
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閉じる コメント(5)

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なんか山田君可哀想。。。
でもでも、、子供の罪の無い正直な心って、ある意味凶器に
近い感覚があるかも・・・。
学校帰りに電柱の後ろで聞いてしまったような感じがしちゃった。。
で、つづきがあるのネ〜〜。。
ゆっくり待っていますね〜。。ポチッと!

2009/8/13(木) 午前 8:57 マンマ

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初めまして、kOROさんのところからきました。
フラッシュを見てそれから、この小説が気になって見にきました。
可哀想・・・です。自分の子どもの頃にあった女の子の苛めの時を思い出しちょっと辛い気持ちです。
何時の時代にも、こう言う事は繰り返されてます。
人間の嫌な面は、どうにもならないのでしょうか?

2009/8/13(木) 午後 9:53 [ よっしー ]

子どもって、時として本当に残酷な生き物になるんですよね
山田くんo(・ω・´o)(o`・ω・)oガンバ!!

第2話、転載させてもらいますね♪

2009/10/5(月) 午後 10:32 [ - ]

もちろん(*ゝω・)σ凸<☆ポチ

2009/10/5(月) 午後 10:32 [ - ]

続きは明日読みに来ます♪

なんか山田君・・・可哀想(T_T)

ポチッと(^_-)-☆

2009/10/31(土) 午後 5:47 [ - ]


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