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5月と8月に試走していたので、だいぶ道は分かっている。
走り出してみると雨もそんなに気にならない。 路面が濡れているので恐かったが、次第に慣れて来た。 町中や住宅街を抜ける道・・ 小さなアップダウンが結構続き道幅も狭い。 車が追い越して行く度、信号待ちが来る度、転倒しないかひやっとするが、 なんとか抜けて行く。 何にしても最後尾で気楽だ。 平均時速多分23〜24km/hかな・・ 練習中は出せて20km/h強だったので、本番でモチベが上がったんだろう。 沿道で「頑張ってー」と声援が飛ぶ。 これは初めての体験で感動でした。 『すいません、私、人様に頑張って〜と応援して頂けるような人徳などないんです』 と、何故か妙に自虐的になる。 小さな姉妹が一生懸命手を振って「ガンバレ!ガンバレ!」と声をかけてくれた。 娘と同じくらいの歳だなあ。 せっちゃんもこの夏、しまなみトレーニングでいつも後ろから 「お母さん頑張って〜」と声をかけてくれた。 いろんなこと思い出して涙が出て来る。 ああ、雨で良かった。 晴れてたらきっとKYてるおやじに「ごっち、目から鼻水出てるよ」って言われてたろう。 そうこうしてる内に1回目の休憩ポイント宝達志水。 ここまで26km、まだ休憩してる人達も結構いる。 少し追いついたな・・ あ、そうだ、トイレ! 水分取ってないのにとにかく近い。 しかし、ここのトイレは手すりのない階段の上。 (私、筋力少ないので手すりのない階段は上がれません) ジェームズ氏が「はい、おんぶ」と背中に乗れと言う。 少しでも時短しようとおぶって階段を上がってくれようとしたらしいが、 おお、滅相もないジェームズボンド!私をおぶったら貴方潰れます。 くそっ!こんなことならもうちょいまじめにダイエットしとくんだった・・ 乙女たまごっちが体重を気にしてウロウロしてると、 てるさんが「時間がないぞ」とやって来る。 2人に両脇を抱えられ捕まった宇宙人状態で階段を登り切りなんとかトイレまで辿り着けた。 「走る」以外に結構大変なこといっぱいあるな・・(涙) なんて落ち込んでもいられない。 ジェームズ氏がゆで卵の殻を剥いてくれて「食べろ!とにかく食べろ!」と言う。 少しでも食べておかないと残り100km弱走り切れない。 卵を無理矢理口の中に突っ込み走り出す。 目指す最初のチェックポイント増穂浦はスタート地点から約71km。 14:30がタイムアウト、それまでに通過しないとそこで終了。 自衛隊のトラックに自転車を積まれ、バスに乗せられ強制送還だ。 夏合宿ではここで16:30だった。 夏のペースなら完全アウト。 とにかく脇目もふらず走る、走る、走る・・・ 脇目もふらずに走ったもんだから1回コースを間違えた。 誘導してくれてたらしいが気がつかなかった。 この区間のことはあまり記憶にない。 気がついたらヨットハーバーが見えた。 滝港マリーナだ。 このすぐ先にキツい傾斜がある。 皆ここで試されるらしい。 それまで颯爽と走っていても諦め押して登る人、 そのまま超えてしまう人・・。 試走では無理だった。 でも本番もしかして・・試してみるか? てるさんが「いや、やめとこ(転倒してはいけない)」と言う。 そうだね、無理してもしょうがない下りて押そう。 3m手前くらいでビンディングペダルから外そうとしたがうまく外れない。 「きゃー」と叫びながら見事に転倒した。 くそっ!どうせ転けるならチャレンジすればよかったよ。 しかし、事前にビンディングの転倒練習しておいて良かった。 プロテクターで上手に防ぐ転け方が出来る。 怪我も打撲もない。 そのまま、坂をゆっくりと押して上がる。 登り切ってサドルにまたがり、 動かない右足をペダルにはめるのに苦労してたらバランスを崩し、 「きゃー」と言いながらまた転けた。 はは、2度目だ。 この辺でだいぶ緊張の糸が切れて来た。 さあ、先を急ごう。 とにかく走る。 必死で走る。 2カ所目の志賀休憩ポイントはトイレのみだ。 もう誰もいない、私達3人だけ。 休んでる時間はないからね。 出発しようとした時に、 サポートスタッフのお兄ちゃんが「これ持ってけ」とおにぎりをくれた。 次に来るチェックポイントは昼食も兼ねる場所。 時間はギリギリ・・ 彼は、間に合っても食事の時間はないと思ったのだろう。 よく見るとコンビニの袋に入ってる。 「これ私が食べると貴方のお昼ご飯は?」 「いい、いい!これ食べて、ついでにドーナツも持ってけ」 ぶっきらぼうな言い方だけど気を使ってくれてるのがよく分かる。 ありがとうと、彼のお昼ご飯を奪いつつ出発。 いざチェックポイントへ。 後ろでは本部の車が繰り返しアナウンス・・・ 「ツールドのと400の出走者は全て通過致しました。 沿道の皆様ご声援ありがとうございました」 沿道にはすでに誰もいない。 アナウンスカー・・かなりのプレッシャーをかけてくれる。 さらにジェームズ氏が追い打ちをかける。 「最後尾を走るなんて今年初めてで、アナウンスカーのこと噂では知ってたけど、 今回初めて聞きましたよ、ははは」 見事な愛の鞭だ! 走る走る。 必死で走る。 最初のチェックポイント「増穂浦」に出走制限30分前くらいに到着。 すごい!夏より2時間以上早く辿り着けたよ。 なんて感動している暇はない。 ここで急いでお昼ご飯。 ジェームズ氏がうどんやカレーを運んでくれる。 ストレッチも同時進行で食べる(というより流し込む感じ)。 食べ終わったらすぐに出発。 「あ、もらったおにぎりもドーナツも食べなかった(笑)」 雨は少し止んだり、また降ったり。 9月はまだまだ暑い季節、雨で良かったのかも・・ 適度に身体を冷やしてくれるので体力が消耗されない。 8月より走りやすくスピードも出る。 何も考えずに、真っ白で走る。 真っ白になって来ると、周りの景色と同化するような気さえしてくる。 ああそうだ。 私はこの気分を味わいたくていつも走ってたんだ。 何も考えない、ただ身体が動くだけ。 この感覚は究極だなと・・今でも思い出すとドキドキします。 傾斜のキツい山間をなんとか足を着くこと無く走り抜け、 ヤセの断崖を、海を見ながら通り過ぎ、 とうとうゴールのある輪島市へ入った。 この辺りから速度が急に落ちて来た。 向かい風だ。 体力も次第に落ちて来る。 次のチェックポイント「門前」は出走制限時間16:15。 30分前の時点でまだまだ先だと聞く。 ダメかもしれない・・ふと頭をよぎるが不思議と身体が勝手に走る。 キツくても身体が走る。 そして出走制限ギリギリ15分前に「門前」到着。 相変わらず本部のアナウンスカーや、リタイヤした人用のバスも後ろから着いて来る。 いつリタイヤしてもいいんだよ〜と言ってるようでちょっと恐くなる。 夏合宿では夜が更け辿り着けなかった場所。 正直ここに制限時間内で入れる確立は2割くらいだろうと思ってた。 ジェームズ氏、今度は手にいっぱいのチョコレート。 「全部食べて、これから円山峠を登るから」 そう、これから標高差250mの峠を越える。 試走ではとても走れず、諦めて車に乗った。 未知の峠・・ きっと途中で登りきれずに足を着くだろう。 膝から下の筋力がほとんどない私はダンシングが出来ません。 坂道で止まったらそこから漕ぎ出すことが出来ません。 押して歩くしかない。 押して歩いてたら完全に時間オーバーでアウトだ。 門前を出る時、9割8分ダメだと心の中で思ってた。 思ってたけど口になんか出せない。 とにかくここまで来たんだ行くしかない。 16時15分。最後の難関「円山峠」へ向かって走り出した・・。 (その4へ続く) |
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