人生論・状況論への招待

映画鑑賞、心象風景・時代風景への視点

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1  神話の世界に摂取された、人間社会の「大いなる不思議」の文学的産物
 
 
私たちの社会は、まるで、男と女しか存在しないように動いている。
 
この存在の〈在(あ)りよう〉を誰も疑うことがない。
 
しかし現実には、私たちがイメージする男や女の身体に、収まり切らない体で生まれてくる「インターセクシュアル」と呼ばれる人たちがいる。
 
「インターセクシュアル」とは、「インターセックス」(「半陰陽」)=「性分化疾患」(日本小児内分泌学会で了承された医学的名称)という性質を持つ人のことである。
 
Wikipediaで、「インターセクシュアル」=「中間的な性」と記述されていたが、「男と女のグラデーション」なら理解できるが、「男と女の『中間』の性」という風に解釈される懸念があるので、非常に危惧(きぐ)する。
 
また、「半陰陽」や「両性具有」(りょうせいぐゆう・後述)という用語も一般的に使われず、現在、「性分化疾患」という用語が普通に使用されている。
 
「インターセクシュアル」の人は、「第一次性徴における性別の判別が難しい状態」であるが、今なお、「性同一性障害」・「トランスジェンダー」とも混同され、正確な認知が進んでいない現実を留意すべきである。
 
巷間(こうかん)では、「インターセクシュアル」は「両性具有」とも呼ばれ、「男女両性を兼ね備えた存在」と定義されている。
 
いつの日か、死語になるであろう「両性具有」については、ギリシア神話に登場するヘルマプロディトスの話が、とても興味深い。
 
最高の女神・アフロディテを母に生まれた、美少年・ヘルマプロディトスが水浴びを愉悦していたら、精霊・ニンフのサルマキスにレイプされ、ヘルマプロディトスの体が一つになり、「両性具有」の者となったという神話である。
 
元々、泉の精の下級女神・サルマキスは、ヘルマプロディトスと森の泉で出会い、情欲に駆られ、立ち所にレイプし、強制的に一心同体にされた結果、ヘルマプロディトスは、「美しい女体を持った美少年」に変容したというオチである。
 
「両性具有」の神話は、ギリシア神話に限定した話ではない。
 
イザナギ・イザナミ(日本神話のルーツ)を父母に持ち、皇室の祖神でもある、日本神話の女神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)が、「太陽神」であることで「男神」であったという仮説もあるが、「日諱貴本紀」の研究の中では、「両性具有神」として描かれている。(「『日韓貴本紀』の国譲り神話に見る天照大神の両性具有性」参照)
 
一切は、科学的所見と無縁であった神話の世界に摂取された、人間社会の「大いなる不思議」の文学的産物であったということである。
 
 
2  「受精と排卵のメカニズム」 ―― 現実のヒトの〈性〉の幅の広さ
 
 
前述のように、「第一次性徴における性別の判別が難しい状態」であるが故に、正確な認知が進んでいない現実において、「両性具有」という名称が独り歩きし、近年、「インターセクシュアル」が「性分化疾患」と呼ばれているが、果たして、「インターセクシュアル」は「疾患」であると言っていいのか。
 
あまりに難しい問題なので、分り辛いのだ。
 
ここで、基礎生物学の一般常識を確認しておきたい。
 
多くの男性の性染色体は「XY」で、女性の性染色体は「XX」だが、性染色体が「X」の「ターナー症候群」(「性自認」・女性)や、「XXY」の「クラインフェルター症候群」(「性自認」・男性)等々、私たちの〈性〉は多様なのである。
 
実用面で限界があるため、「その他を含む」という意味で、現在、LGBTという表記が一般化しているが、「LGBTIQA」(注)と表記されることを想起すれば、例えば、英語版フェイスブックが、利用者がプロフィールを作成する際の性別欄に、71種類もの選択肢を用意したエピソードに象徴されるように、一切は、「性の多様性」という表現に収斂されるだろう。
 
〈性〉は、「多数派の男=普通の男」と「多数派の女=普通の女」のみであるという、至極(しごく)単純な話ではないのだ。
 
ここで、政権与党の、想像以上によく練られている、【性的指向・性同一性(性自認)に関するQ&A】において、杉田水脈の「所感文」が犯した初歩的で、致命的誤謬を正しておく。
 
―― 以下、自民党のQ&Aでの見解を、部分的に再構成しながらピックアップする
 
「身体的な性別についても、性染色体、生殖腺、ホルモン、内性器、外性器などの特徴により、男性化・女性化が区別されますが、非典型的な組み合わせの方も存在します。そのような方は、医学的には『性分化疾患』とされます」
 
「性別は、戸籍上は『男性』・『女性』に明確に区別されていますが、実際的には身体的性別、性同一性、性的指向などの要素があり、それぞれに多様な組み合わせがあり、とても複雑なものと捉えられます」
 
「『性分化疾患』(Differences of development)」は、現在では、『DSD』、『性に関する様々な発達状態』とも呼ばれ、性的マイノリティには含まれないとの当事者団体の声明があります。性的指向や性自認と混同しないようにして下さい。決して『中間の性』ではなく、単に、『男性の体、女性の体にも色々ある』ということです」
 
従って、「DSD」において、「両性具有」ではなく、現時点では、「性分化疾患」という概念で統一されざるを得ないこと。
 
―― 以上の文脈によって、LGBTについての政権与党の最も重要な指摘は、「インターセックス」が医学的名称としての「性分化疾患」(DSD)であり、「中間の性」という用語を否定し、「両性具有」という用語の使用をも不都合であると結論づけていること。
 
そして何より、「性同一性、性的指向などの要素があり、それぞれに多様な組み合わせがあり、とても複雑なもの」と言い切ったこと
 
時の政権が、「性の多様性」を明瞭に認知しているのである。
 


心の風景 『多様性』の揺らぎの海に生きる」よりhttp://www.freezilx2g.com/2018/11/blog-post.html

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