YAMINABE the Second Operation

この11年間の数多くの思い出を携え、私は新たな旅へと出発します。それでは皆さん、御達者で。

第二七計 仮痴不癲

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承前  故事其之壹 ─ 己





「何用か?」


 蘇従は楚荘王の淫蕩ぶりを諌めた。楚荘王はわざと語気を強め、


「そちは我が令(布告)を聞かなんだか!?」


 と一喝した。それに対して蘇従は答えた。


「例え我が身を殺してでも(死罪になっても)、我が君を賢明にする事こそ、臣の願いにございます。」


 そう言って蘇従は退出した。


 そしてそれ以降、楚荘王は淫楽やその他遊興三昧をピタリと止め、初めて本格的に親政を開始した。





 ♕ 鳥、羽ばたき鳴く──────親政の開始

 これまでの3年間、楚荘王は暗君の振りをして世間を欺き、油断させていた裏で、実情の調査を入念に進めていた。
 群臣の素行・行状・能力などを、つぶさに監察していたのであった。
 そうして3年が過ぎ、それらの秘密裏の調査が全て済み、最早暗愚を装う時期は終わった。
 そこで即位以来初めて、暗君の仮面を脱ぎ捨てて、本格的な執政を開始した。まずは論功行賞である。


 群臣は楚荘王を暗君だとすっかり侮り切っていたので、完全に裏を掻かれてしまい、不正の証拠を隠蔽する暇など全くなく、完全に追い詰められてしまった。
 あらゆる不正を犯していた悪臣たちを、数百人も一斉に誅殺した。
 そして先の伍挙と蘇従を始めとした人格・手腕に秀でた者たちを数百人も登用した。
 この快事に楚の民は大いに喜んだ。
 正しく楚荘王は「痴を仮るも癲せず」──────仮痴不癲策を見事に駆使して、国内に巣食う獅子身中の虫を炙り出し、国に有益な賢者を大勢発掘したのであった。


 ちなみに楚荘王に対して「三年鳴かず飛ばず」の謎掛けをした大夫・伍挙の子が伍奢(ごしゃ)で、その伍奢の次男が伍員(ごうん)、字が子胥(ししょ)である。
 字の方が有名なので歴史上は「伍子胥(ごししょ)」で通っている。
 この伍子胥が絡んだ逸話は、【第一一計 李代桃僵】の故事(リンク先工事中)を始めとして、何本かに分けて語る。


 以上が「鳴かず飛ばず」という故事成語の由来である。
 意味は「将来の活躍に備えて、その機会をじっと待っている様子」という意味である。
 よく「泣かず飛ばず」と表記されるが、これは誤りである。正しくは「鳴かず〜」である。
 元来はそういうポジティヴな意味の故事成語であるが、現在では意味もやや転化してしまい、「これと言って目立った仕事や活躍をしていない様子」「目立たず、人から忘れられている様子」等のネガティヴな意味で使われている。





 ♖ 『韓非子』での記述

 この楚荘王の最初の人事行賞の断行について、『韓非子(かんぴし)』の第二十一篇【喩老篇(ゆろうへん)】での記述では、以下のようになっている。


『廃止する所の者は十、起こす所の者は九、大臣を誅すること五、処士(しょし)を挙ぐること六、而(じ)して邦(くに)大いに治まる。』

【意味:廃止した案件が十件、新規に起ち上げた案件が九件、五人の大臣を誅殺し、在野の賢人を六人登用し、こうして国はよく治まった。】


 司馬遷(しばせん)の『史記(しき)』の【楚世家(そせいか)】では、以下の記述となっている。





後続  故事其之壹 ─ 辛(完結編)

「第二七計 仮痴不癲」書庫の記事一覧

閉じる コメント(8)

伍子胥もまた先駆的過ぎたのか、彼の該博で犀利溢れる思考が他者に十分理解されず不条理で理不尽な末路を迎えてしまいましたね。時代の先駆けは古今東西を問わず悲憤慷慨を味わう宿命のようなものを負っているのでしょうか。

2013/1/23(水) 午前 0:59 [ 彩帆好男 ]

先駆的過ぎたのかどうかはよく判りませんが、少なくとも主君の呉王夫差が愚か者だったのだけは間違いないでしょうね。
君側の奸であった伯嚭の讒言に惑わされていたのですから。

夫差に比べれば、ライヴァルの越王勾践の方がよりマシでした。
范蠡の献策や諫言を聞き入れるだけの度量はありましたから。


本人の余りに剛直で激情的な性格も災いしたのでしょうが、仕えた主君に恵まれなかったのでしょう。
夫差の父親の闔閭も人徳があったとは言えませんが、まだ諫言を聞き入れる度量だけは多少ありましたから。

後は引き際を誤ったのかも知れません。
夫差に代替わりしてから、適当な所で引退すれば、ライヴァルの范蠡みたいに終わりを全う出来たかも知れません。

2013/1/23(水) 午後 1:14 ZODIAC12

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暗愚に見えるトップと言うのも二通りあるのですね。本当のボンクラとバカを装ってつぶさに実情把握をしているパターン。野球チームのダイエーの根本総監督は広島や西武でも同じ手法を取りました。

一方バカな事をやって本当のボンクラは民主党の面々でした。傑作&TBします。

2013/1/23(水) 午後 8:23 千葉日台

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3本目のTBと、ナイス押しをどうもありがとうございます。


その根本監督の御話は、確か旧ブログでも披露して下さいましたよね。
デタラメを装って選手たちを野放図にさせて、本当にチャランポランやった選手たちを他所にトレードに出したとか。


それに比べて民主党は「ふり」なんかじゃなくて、正真正銘の無能のゴミクズばかり・・・・・(ーー;)。
最後の最後まで、何一つ国益に適うような事をしなかったばかりか、ルーピーの奴は政界引退したくせに支那で国賊行為・・・・・。

2013/1/24(木) 午前 8:41 ZODIAC12

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鳴かず飛ばずが、そういうポジティブな意味だと初めて知りました。もっともこの記事を読み始めたら、想像はつきますけどね。
ところで、楚荘王が遊蕩三昧をしている間、いろいろな調査を裏でしていたということは、王直属の諜報部員みたいな、御庭番みたいな家来がいたのでしょうかね。口が固く、ひたすら裏方に徹するような王に忠義でありながら滅私奉公的な人材が必要ですよね。

2013/7/28(日) 午後 10:45 [ さざんか ]

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どうでしょうね?そういった事は正史の記録には記されていないのですが、これだけ見事にやり遂げたからには、やはりそういった手足や耳目となる間諜(スパイ)組織の存在があったと思った方が自然でしょうね。
そういった裏世界の話って、時代が遡れば遡る程に、記録が残ってないんですよね。存在はしていただろうとは思うのですが。


さざんかさんは御忘れでしょうか?
実は今は亡き敬天愛人さんの旧ブログの方で、今から3年前にこの「鳴かず飛ばず」の故事成語を題材に記事化していて、そこに私もさざんかさんも顔を出したのですが。

↓↓がそうです。

【鳴かず飛ばず】
http://blogs.yahoo.co.jp/sort5694/25123857.html

上から2個目の2010/4/3(土) 午後 9:37[ ]というのが私です。
私の旧ブログの時の物ですから、名前アイコンが消えていますが。

2013/7/29(月) 午後 5:25 ZODIAC12

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今見て来ました。
懐かしいですね。もうほとんど忘れていましたが、敬天愛人さんは、時々故事成語を記事にしておられましたよね。
内容はすっかり忘れていました。その時はきっと面白いと思って読んでいるのでしょうが、ZODIAC12さんの記事を読んでも初めて聞いた話と思っていたのですから、情けないものです。
さすがに、今回は、忘れることはないでしょう。

2013/8/2(金) 午後 10:33 [ さざんか ]

顔アイコン

敬天愛人さんの記事は憶えておられませんでしたか。
私の記事で覚えがより確固としたものになられましたら、それこそ光栄です!(^^)b

2013/8/3(土) 午前 10:40 ZODIAC12

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