YAMINABE the Second Operation

この11年間の数多くの思い出を携え、私は新たな旅へと出発します。それでは皆さん、御達者で。

第七計 無中生有

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承前  故事其之壹 ─ 乙





 前述の通り北方の隣国・燕の国君である燕昭王が、楽毅を上将軍として、秦・韓・魏・趙・楚と語らって斉の攻伐に打って出た。
 斉軍はひとたまりもなく壊滅的な大敗北を喫し、国都・臨淄は陥落させられた。斉湣王は秘かに臨淄から脱出し、莒の城市まで落ち延びて、そこに立て籠もった。
 燕軍が斉の城市を次々陥落させ、田単は難を逃れる為に安平(あんぺい)【※9】の地まで逃げ延びた。
 だが燕軍が安平にまで攻めて来て、安平の城市の城壁を破壊し、この安平も陥落してしまった。そこで斉人たちは先を争って逃げ出した。
 田単は事前に宗人(そうじん)【※10】たちに、車の車輪の車軸の端を切り落として、鉄籠(てつろう)【※11】を嵌めこむよう忠告しておいた。
 だからこそ、斉人たちが車に乗って逃げ出した時、車軸の軸頭が折れてしまい、車が損壊して燕軍に次々捕らわれて行ったが、田単の宗人だけは、事前に車輪の車軸を補強しておいた御蔭で、急いで走らせても車が損壊する事なく、無事に逃げ延びられて助かった。





 ♞ 下吏から将軍へ

 田単と一族は安平より東に進んで、即墨へと辿り着いた。
 燕軍は勢いに乗って、斉の国内にある七十余もの城市を次々と陥落させ、占領下に置いて行った。
 だが残る二城市──────斉湣王の立て籠もった莒と、田単たちの逃げた先の即墨──────だけは頑強に抵抗し、燕軍は陥落させられずに手古摺っていた。
 燕軍は斉湣王が莒にいると知り、軍を合流させて莒を攻めた。


 その燕軍の莒攻略中に、一大事変が起こった。前述の通り斉湣王が、宰相の淖歯(どうし)に裏切られ、殺されたのである。
 こうして大きな成果を得て、淖歯と密謀を語らった楽毅の狙いは半分は当たったが、残り半分は外れた。
 その淖歯が、自分たちの王を殺されて怒りに燃えた斉の民衆によって、僅かな期間で殺されてしまったのである。
 その後も莒は王の死にも関わらず、莒の守備軍は城市を堅固に守り抜き、数年間も陥落させられる事はなかった。


 そこで燕軍も一旦は莒の攻略を中断して、田単のいる即墨へと矛先を向けて来た。
 燕軍は即墨を包囲し、即墨の大夫と守備軍はこれを迎え撃った。
 だが天才的な将軍・楽毅の敵ではなく、結果は無惨にも燕軍に敗れて死んだ。
 城市内の人々は危機感を抱き、揃って田単を推挙した。


「安平の戦いの時に、田単の宗人は車軸に鉄籠を備え付けていたので、皆無事に助かった。田単は兵(軍事)を心得ている。」


 と言った。そうして即墨は上下揃って、田単を将軍に推し立てて軍を指揮させた。
 将軍に任命されて以降、田単は巧みな采配により、燕軍を寄せ付けなかった。





 ♟ 田単の離間策──────楽毅の解任劇

 そうしている間に、燕本国において、今回の斉への大掛かりな侵攻作戦を主導した燕昭王が死んだ。
 時は紀元前279年、楽毅の斉討伐の軍を起こした時から6年目の事であった。
 代わって燕昭王の太子が即位した。燕恵王【えんのけいおう:姓は姞(きつ)、氏は燕(えん)又は召(しょう)、名は不明】である。
 燕恵王は太子だった頃より、上将軍の楽毅とは関係が良好ではなかった。


 田単はその情報を掴むや、厄介この上ない楽毅を始末する絶好の機会だとばかりに、燕の国内に間諜を放った。
 田単は次のような噂をばら撒かせて、攪乱工作を仕掛けた。





後続  故事其之壹 ─ 丁

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閉じる コメント(6)

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王が死んでも崩れないとは、よほど民心を掴んでいたんでしょうね。

さて、どんな噂をバラまいたかな^^

ナイス

2013/3/6(水) 午後 8:15 栞

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ナイス☆感謝します!!

そこが意外と言うか・・・・斉湣王って他国から嫌われてた、どちらかと言うと暴君の部類なんですけどね。とても名君とは言い難いし。

2013/3/7(木) 午前 8:24 ZODIAC12

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これは、ある意味隔岸観火の場合の、外に敵がいる場合は内輪の団結心が高まるという、あれですかね。たとえ暴君であっても、自分たちの王だという意識が強くなって、外から来たよそ者のくせに、t裏切ったということが、民衆の怒りを買ったのでしょうね。

それにしても、田単という人も、自分の一族が助かるために同じ国軍の仲間をおとりに使うというのは、冷酷な感じですね。

2013/10/9(水) 午後 5:08 [ さざんか ]

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これも隔岸観火の部類に入るのかどうか・・・・。
ですが余所者に裏切られて殺された事で、余程怨恨が深まったのでしょう。

斉湣王も他国に対しては暴君でも、自国に対しては案外それ程でもなかったのでしょう。
記録を見ても確かに明君とは言い難く、問題もあり、多少の失政はあっても、自国の民衆に対して暴政らしい暴政を振るった逸話もないようですから。


>自分の一族が助かるために同じ国軍の仲間をおとりに使うというのは冷酷・・・・

いえ、ここでは囮に使ったというのでもなさそうですね。
一族にしか教えなかったとしても、他まで教えて回る余裕がなかっただけかも知れません。
ただ後になってから、田単は味方の兵士を策略のタネに使って傷付けさせるという、非情な面も表しますが。

2013/10/10(木) 午後 6:46 ZODIAC12

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なるほど、自国ではさほど問題なかったのですね。
それなら、民衆としては、自分たちの王が悲劇の王に思えて、よそ者を恨む気持ちにもなりますね。

それにしても淖歯というのは、民衆の心をつかむことができない策を取るとは、優秀だとしても、イマイチですね。

田単は、今回は仕方なかったということなのですね。
非情な面も、時には必要な場合もありますが、どんな人物なのか、楽しみに読み進みます。

2013/10/13(日) 午後 9:04 [ さざんか ]

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淖歯の人間性は詳しくは知らないものの、野心が強かったのでしょう。けれど民心をきちんと読み切れてなかったのですね・・・・・。
まあ他所者がいきなりこういう大胆な事やったら、大概失敗に終わりますよ。

この殺された斉湣王の生まれた家系である田氏一族は、元々前時代の斉の君主だった姜氏一族に仕えていた大夫でしたが、十代二百何十年掛かりで、ようやく斉の君主の座を奪い取りましたからね。
これ位の辛抱強さと手間暇を掛けるべきだったでしょうね。


田単については次で。

2013/10/15(火) 午後 9:32 ZODIAC12


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