YAMINABE the Second Operation

この11年間の数多くの思い出を携え、私は新たな旅へと出発します。それでは皆さん、御達者で。

第七計 無中生有

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承前  故事其之壹 ─ 己





「我は燕軍が城外の冢墓(ちょうぼ)【※16】を暴き、先人(祖先)を辱めはしまいかと憂えている。そう思うだに寒心(かんしん)【※17】に堪えぬ。」


 反間──────燕軍にとっては自軍の密偵──────よりその情報を伝えられた燕将・騎劫は、今度もまた深慮する事などなく、「敵が嫌がる事なら何でも・・・」とばかりに、その通りに実行してしまった。
 燕軍は悉く即墨の将兵や民の壟墓(りょうぼ)【※18】を掘り返して、それらの祖先たちの遺骸を焼き払った。
 そんなおぞましい光景を、即墨の者たちは城壁の上から目撃した。
 城市内の者たちは余りの仕打ちと屈辱に、軍民揃って皆涙を流して泣き、激しく憤り、軍兵以外の者たちでさえも共に出陣して、燕軍相手に戦いたいと志願するようになった。
 こうして田単の思惑通り、城市内の者たちの怒りは十倍となり、士気や、復讐心や、団結心は益々高まって行った。
 これら一連の計画が順調に進み、田単は自軍の士卒(将兵)が使える、すなわち戦っても勝てるようになったと踏んだ。





 ♙ 田単の無中生有策──────第四段階:苦楽を分かつ

 第四段階では、田単は城市の皆と苦楽を分かち合うようにした。
 田単は自ら版挿(はんそう)【※19】を手に取って、士卒たちに交じって城塞の土木工事に従事した。
 そして自身だけでなく、妻妾たちをも軍の隊列に組み入れ、それぞれ一兵士として軍務に従事させた。
 また田単は将卒たちに酒食を惜しみなく振る舞い、大いに御馳走した。
 これにより田単と皆の連帯感や互いの信頼感が醸成されて行った。





 ♚ 田単の無中生有策──────第五段階:偽装降伏

 第五段階である。次に田単は本来の戦力たる甲卒(こうそつ)【※20】たちを隠し、戦力とはならない老人や女子供を城壁に上がらせ、守備兵に仕立てた。
 そうする事で燕軍に対して、即墨は人手が尽きて困窮しているかのように見せ掛けたのである。
 そして燕軍の司令官・騎劫の下まで使者を派遣し、即墨が降伏する旨を伝えさせた。言うまでもなく偽装降伏である。
 これを聞き、燕の将兵一同は揃って「万歳!」と叫んだ。


 次に田単は、即墨の民から金を徴収して、千鎰(せんいつ)【※21】もの量の金を集めた。その千鎰もの金を、即墨の一人の富豪に手渡して、敵将・騎劫の下まで贈物として届けさせた。
 その際に富豪は騎劫に、


「もし即墨が貴軍の手に落ちましたなら、願わくは我が一族や妻妾を捕らえたり、我が財物を掠めたりする事のなきようにと、将軍より安堵を賜りとうございます。」


 と懇願した。
 敵が降伏する事となっていた上に、手厚い賄賂を贈られた事で、騎劫は大層上機嫌であった。為に富豪の願いを聞き届けた。
 こうして司令官の騎劫以下、燕軍は上下共に益々油断するようになった。





 ♛ 田単の無中生有策──────最終段階:「火牛の計」

 そうしていよいよ最後の第六段階に入った。すなわち本格的な反攻の開始である。
 最後の仕上げ段階として田単は、城市内で牛を千頭程集めておいた。





後続  故事其之壹 ─ 辛

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閉じる コメント(6)

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騎劫って信じられないくらいのバカ武将ですね。

古今東西、自分の父祖の墓を暴かれて怒らない者はいないでしょう。

苦楽を共に〜って、こういうのは中国じゃ珍しいイメージです^^
たたき上げの戦国武将だと城普請で一緒にモッコを担ぐって、ちょいよい見かける話ですけど^^

さて牛をどうするのかな?
ナイスヽ(*´∀`)ノ★ぽち

※色々あって記事への訪問が途切れてすいませんでした。
またマイペースで再開します^−^

2013/4/7(日) 午後 8:19 栞

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まずはナイス☆感謝します!


騎劫は燕恵王に諂って出世したという話もあるみたいなので、その程度の小物だったのでしょう(苦笑)。愚君には佞臣が付き物でしょうから(^^;)。
思慮が浅くて兵法の心得もなかったみたいですから、田単の敵ではなかったでしょうね。


支那では下の者たちと苦楽を共にするタイプは・・・・・司馬穣苴(しばじょうしょ)や呉起(ごき)なんかが良い例かも。人心収攬術に長けていました。
後は・・・・・思い浮かばない(^^;)。

日本の戦国時代だと、一代での成り上がりでないにも関わらず、蒲生氏郷なんかは珍しくそういうタイプですよね。快男子だったみたいですし。


まあ諸事情を御察ししますので、復活果たされて、調子を取り戻されたようで何よりでした。(^^)b

2013/4/8(月) 午前 9:45 ZODIAC12

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敵が弱く見えて、うまく行きすぎているという時には、かえって警戒が必要ということですね。
それにしても、この騎劫という敵将はいいように騙されていますね。田単が上手いのか、騎劫が愚かすぎるのか、どっちかわからないですね。もちろんどちらでもあるのでしょうが、田単の力量の正確なところが、どのレベルなのかなとか、別のまともな敵将と戦わしてみたい気になりますね。結構いいところに行きそうな気もしますね。

同じ釜の飯を食うといいますが、これってほんとに結束を固めますね。こういうやり方など、兵法を学んだのか、独自で考えたのかわかりませんが、自分で考えたのなら、すごい人物ですね。

2013/10/21(月) 午前 10:02 [ さざんか ]

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両方でしょう。田単が優れた将軍であるのと同時に、騎劫が愚か過ぎたのです。


もしも田単が他の武将と戦ったなら・・・・・・もしまともに戦ったら、良い勝負が出来そうなのですが、そういう逸話は特にないのですね。
ですがここを読み進めて行けば、それに近い話が出て来ます。田単が武力・智略を比べるのではなく、趙奢(ちょうしゃ)という名将と兵法談義をするシーンが、少しばかり出て来ます。


同じ釜の飯を食う・・・・これは上下間の親睦を高め、一体感や結束力を生み出すでしょうね。
これと似たような事例で思い出すのは、田単よりも前の時代を生きた、天才兵法家の呉起(ごき)ですね。
『孫子』と並ぶ兵法書『呉子』は、この呉起の言行録とも言えるものです。

呉起が魏の国で将軍を務めていた時の事。
呉起は兵卒たちと同じ格好をし、同じ食事を取り、同じ幕舎で寝起きしました。
そして兵卒の膿や腫物を、直接自分の口で吸い取りました。全軍を率いる将軍がですよ!!

それが大きく物を言って、魏軍は戦に連戦連勝で、遂に魏を天下一の強国にまで仕立てあげました。要因は決してそれだけではないのですが。

2013/10/23(水) 午後 0:09 ZODIAC12

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その兵法談義、楽しみですね。

呉起という人もすごい人なんですね。こうしたやり方が、ただ味方の結束を固めるための作戦だけではなく、思い遣りが深いとか、そういった人格的な偉大さからも来ている可能性もあれば、非常に立派な人物ですね。
膿を口で吸い取るなんて、なかなかできることではないですよね。まるで光明皇后の逸話みたいです。
どちらにしても、優れた人物ですね。

そういえば、ナポレオンも、部隊で伝染病が起こった時に、その病兵達の病棟を訪れて、伝染病など気にもかけずに励まして歩いたということですね。それによって、兵たちがあっという間に伝染病から回復して、伝染病がおさまったという逸話があるそうですが、指揮官の兵卒への思いをどれだけ伝えるかというのは、勝負の必勝法とも言えますね。

ところで、この兵卒と同じ条件で過ごすという方法は、日本的経営法にはよく出てきそうですね。ある意味、日本のリーダーには、当り前の哲学のようなところもありますね。
古来より天皇が、そうですからね。

2013/11/3(日) 午後 3:12 [ さざんか ]

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ほおお!ナポレオンにもそのような逸話が・・・!!
それは初耳でした。兵士たちの伝染病を瞬く間に一掃させたとは、正に「病は気から」を地で行ってますね。


こういった在り様は、天皇を始め、日本のトップにはよく聞かれる逸話ですよね。
外国じゃ珍しいとしても、日本じゃそれ程には珍しくないように感じますね。

上下一体感を生じさせる事に巧みな指導者が日本史上には多く見受けられます。外国のトップ程には隔絶感を感じませんね。

2013/11/5(火) 午後 8:34 ZODIAC12


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