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| 第71話 |
| 黄金のライオンを見付けた臆病者 |
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| 臆病な守銭奴がいた。この男、金色のライオンを見付けてこう呟いた。 |
| 「こんな事になって、俺は一体どうなっちまうんだ!?どうして良いかまるで分からん! |
| 金好きな性分と生来の臆病さが俺を二つに引き裂こうとしている。 |
| どんな神が金色のライオンなんぞを生み出したというんだ?今の俺の心は真っ二つに割れて鬩ぎ合っている。 |
| 金は好きだが、同時に金で出来たものは恐ろしい。 |
| 欲望が手に入れろと急かしながら、臆病な性格が手を出すなと押し止めやがる。 |
| 与えておきながら取る事を許さない運なんて!!喜びを伴わぬ宝物め!神の益体もない御利益め! |
| さてさて、どうしてくれようか!?どんな方法があろうか?どんな妙案があろうか? |
| そうだ!!一先ずは家へ帰って、召使いたちを連れて来よう。 |
| 大勢の手でアイツを捕えさせ、俺はそれを遠くで眺めてりゃいいんだ!」 |
| 財産に手を付け、使う度胸もない金持ちにこそ、この話は当て嵌まる。 |
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| 第72話 |
| 養蜂家 |
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| 養蜂家の留守中を狙って、その小屋に忍び込み、蜜と巣を盗んで行く者がいた。 |
| 帰って来た養蜂家は、巣箱が空になっているのに気付いて、その場で探し回った。 |
| そんな最中に蜜蜂たちが花畑から戻って来て、養蜂家の姿を認めるや、針で刺しまくって死ぬような目に遭わせた。 |
| そんな蜂たちの仕打ちに怒った養蜂家は詰った。 |
| 「この碌でなしどもめ! |
| お前たちの巣を盗んだ奴には何もしないでおきながら、あべこべにお前たちの世話をしている儂(わし)の方を刺すのか!」 |
| このように人間の中にも、無知のせいで敵を警戒しないばかりか、よりによって味方を裏切り者と思い込んで、追い払ってしまう者もいる。 |
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| 第73話 |
| 海豚と猿 |
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| 船旅をする者には旅の道中の慰めに、マルチーズ犬[★73−1]や猿を旅の御伴に連れて行く習慣がある。 |
| ある者が船出に際して、猿を一緒に船に乗せた。 |
| 船がスニオン岬[★73−2]の辺りに来た時に、激しい嵐に襲われて、船は転覆してしまった。 |
| 乗ってる者たちは全員海に飛び込み、この猿も泳ぎ出した。 |
| 海豚(いるか)がこれを見て、猿を人間だと思い、猿を自分の背に乗せて陸まで運んでやろうとした。 |
| そしてアテナイの外港[★73−3]であるペイライエウス[★73−4]にまで近付いた所で、海豚が猿に尋ねた。 |
| そう尋ねられると猿は、てっきりそれを人の名前だと勘違いし、こう答えた。 |
| 「ペイライエウスなら、それこそ毎日のように会っている友人だ。」 |
| 海豚は猿の吐いた嘘に怒り、猿を水の中に叩き落として溺れさせた。 |
| この話は嘘吐きにこそぴったり当て嵌まる。 |
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| [★73−1]マルチーズ犬・・・・・地中海に浮かぶマルタ島を原産地とする犬種。最も古い愛玩犬。尚、「マルチーズ(Maltese)」は英語で、「マルタの」の意。 |
| [★73−2]スニオン岬・・・・・ギリシアのアッティカ半島の最南端にある岬。ギリシア神話に登場する海神(海界の王)ポセイドンを祀る神殿がある事で知られる。 |
| [★73−3]外港・・・・・中心都市の外部の港湾又はその都市。中心都市が海と接してなく、内陸に位置する等の地理的環境から、都市内部に直接的に港湾を持てない場合に、その都市にとって港湾としての機能を、間接的に果たす役割を負った。 |
| [★73−4]ペイライエウス・・・・・ギリシアのアッティカ半島にある港湾都市ピレウスの古名。古代よりアテナイ(アテネ)の外港都市として栄えた。 |
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| 第74話 |
| 水辺の鹿 |
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| 喉の渇いた鹿が泉までやって来た。 |
| 泉の水を飲み終え、水に映る自分の姿を見た鹿は、大きな角が見事に枝分かれしているので、得意な気分になれた。 |
| だがその反面、脚が細くて弱々しいのを悲しく思った。 |
| 鹿が物思いに耽っている所へライオンが現れ、追い掛けて来た。 |
| 鹿は全速力で逃げ出し、ライオンを遠く引き離した。しかしそれも木のない平原を走っている間だけであった。 |
| 木々の鬱蒼と生えている森林の中へ来ると、角が木の枝に絡まって身動き取れなくなってしまい、とうとうライオンに捉まってしまった。 |
| 鹿は殺される間際に言った。 |
| 「ああ、何たる事だ・・・。裏切られると思っていたものによって逆に助けられ、最も頼りとしていたものによって逆に死に追いやられるとは・・・・。」 |
| このように危機に際しては、疑いを持っていた友に救われたり、厚い信頼を寄せていた友に裏切られたりする事がよくあるのだ。 |
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| 第75話 |
| 片目の鹿 |
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| 片目の潰れた鹿が海岸にやって来て、そこで草を食べていた。 |
| 健常な方の目は、陸の方向に向けて、猟師に襲われないよう警戒した。 |
| 潰れた方の目は、危険がないと思った海の方向に向けていた。 |
| ところがその沿岸を航行する者がいて、鹿の姿を見るや、狙い外さず鹿を射当てた。 |
| 倒れた鹿は言った。 |
| 「何て事だ・・・・。頼りとした海の方こそがずっと手強いのに、陸の方ばかりを警戒していたとは・・・・。」 |
| このように我々の予想や思い込みとは反対に、手強いと思っていたものが救いとなったり、救いと思っていたものが危なっかしいものだった、という事はよくある。 |
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