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| 第111話 |
| ヘラクレスとプルートス |
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| ヘラクレス[★111−1]は神々の列に加えられたので、主神(最高神)ゼウスの館で歓待された。 |
| その時にヘラクレスは、一柱ずつの神々に実に愛想良く挨拶をして回った。 |
| しかし最後にプルートス[★111−2]が入って来ると、ヘラクレスは打って変わって床に目を落とし、背を向けてしまった。 |
| この様子を怪訝に思ったゼウスが、何故プルートスだけを白眼視するのか、その訳をヘラクレスに尋ねると、ヘラクレスはこう答えた。 |
| 「私がプルートスを白い眼で見るのは他でもありません。 |
| 嘗て私が人間世界にいた頃、奴が大抵は悪い連中と一緒にいる所を見て来たからなのです。」 |
| 運良く金持ちになっている性根の悪い者について、この話をする事が出来よう。 |
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| [★111−1]・・・・・ギリシア神話に登場する半神半人の中では最大の英雄。 |
| 主神(最高神)ゼウスと人間の女性アルクメーネーの間に生まれた。 |
| 屈強の身体と剛勇無双を誇った。 |
| [★111−2]・・・・・ギリシア神話における富と収穫の神。 |
| 善人にのみ富を授けるとゼウスに宣言したが、それでは貧富の差が甚だしくなるばかりであるという事で、ゼウスによって人の善悪が見えないようにと視力を奪われた。 |
| そうして盲目となったせいで、必ずしも善人の所ばかりへ行くとは限らなくなった。 |
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| 第112話 |
| 蟻とセンチコガネ |
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| 夏の盛りに蟻(あり)が畑を歩き回った。 |
| 冬に備えて、大麦や小麦を食糧として溜め込む為である。 |
| センチコガネはこの光景を見て、他の動物が仕事を止めてのんびりしている時に、汗水流して働くとは何ともしんどい事だ、と驚いた。 |
| 蟻はこの時は何も反論せずに黙ったままでいた。 |
| やがて冬が訪れ、センチコガネの餌となる糞が雨に流されてしまった。 |
| すっかり食うに困ったセンチコガネが、食糧を分けてもらおうと蟻の下までやって来た。 |
| 蟻は次のように言った。 |
| 「センチコガネ君。君はあの時、私が汗水流して働いている事をどうのこうの言ってくれたな。 |
| もしあの時、君も私と同じ苦労をしておけば、今頃そうして食に困る事もなかっただろうに。」 |
| このように余裕がある内に、将来に備えておかない者は、時勢が変わるや、立ち所に酷い不幸に見舞われるのである。 |
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| 第113話 |
| 鮪と海豚 |
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| 鮪(まぐろ)が海豚(いるか)に追われていて、水音高く逃げ惑っていた。 |
| 今にも海豚に捕まりそうになり、余りに強く跳ね過ぎたせいで、勢い余って浜に乗り上げてしまった。 |
| そして海豚の方も同じ勢いで突き進んで来たので、鮪と同じく浜まで飛び出てしまった。 |
| 鮪はそれを見ると、息も絶え絶えの海豚に向かって言った。 |
| 「これでもう死んでも辛くはないぞ。 |
| 何せ俺が死ぬ羽目となる元凶となった奴が死んで行く様を、こうして見届けられるのだからな。」 |
| 己自身だけでなく、己に降り掛かった災厄の原因となった者までが、同じく不幸に陥るのを見た時、人はより不幸に耐え易くなるという事を、この話は説いている。 |
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| 第114話 |
| 野辺送りする医者 |
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| 医者が身内の者の野辺送りに従いながら、葬列の者たちに向かって言った。 |
| 「この人は酒を控え、浣腸を施していれば、死ぬ事もなかっただろう。」 |
| 「おいおい、今頃になってそんな事を言った処で、何の役にも立たんぞ。 |
| その手段が使える時にこそ勧めるべきだったな。」 |
| 友人への援助ならば、それが役立てられる間にこそ援助すべきであって、もはや何も手の施しようがなくなってから、お為ごかしなど言うべきではないという事を、この話は説いている。 |
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| 第115話 |
| 鳥刺と蝮 |
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| 鳥刺(とりさし)[★115−1]が鳥黐(とりもち)と竿を持って狩猟に出掛けた。 |
| 高い木の上に鶫(つぐみ)が留まっているのを見付けたので、鳥刺はこれを捕えようと思った。 |
| 竿を長く継ぎ足し、一心に狙い定めたが、全ての意識を頭上の鶫に集中し、首を上げたままだったので、足元への意識はすっかり疎かになっていた。 |
| そのせいで地面で眠っていた蝮(まむし)を踏ん付けてしまった事にも気付かなかった。 |
| 踏み付けられた蝮は反り返り、鳥刺に噛み付いた。 |
| 鳥刺が息の下(息の絶えようとしている状態)から言った。 |
| 「何と情けない事か・・・・・他を狩ろうとしていながら、まさか迂闊にも己が狩られて死んで行くとは・・・・・。」 |
| このように隣人に対して悪事を企む者は、まず自身が先に禍に陥るのである。 |
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| [★115−1]・・・・・鳥黐等の道具を用いて、鳥類を捕獲する狩猟行為。又はそれを職業とする人。 |
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112話
アリとキリギリスみたいな・・・
日本ですと、アリがセンチコガネ(キリギリス)に施しをし、救うことと反省させる!に重きをおきますが、西洋は「へっ!ざまあ!」の荒ぶれた精神なんですね。
2018/6/17(日) 午後 6:19
>>たけしさん
ナイス★ありがとうございました。
イソップ寓話はネタが他のと被ってる寓話が結構見受けられまして、112話もその類ですね。
日本人ならほぼ誰もが知る、その「アリとキリギリス」の寓話は、これよりずっと先の373話に収録されてます。
ただ元ネタはキリギリスではなく蝉になってますが。
これはギリシアから北の寒い地方に伝わって行くに連れて、改変されたようです。
何せ蝉なんてギリシアみたいな温暖な地方にしか生息してなくて、ヨーロッパの北へ行くと寒くて生息してないから、蝉じゃ分かりにくいだろうという事で。
そして仰る通り、元ネタの方は「アリが蝉を冷たく見殺しにした」というオチになってます。
日本人とは精神の在り様が違うのでしょう。
2018/6/18(月) 午前 10:06