YAMINABE the Second Operation

この11年間の数多くの思い出を携え、私は新たな旅へと出発します。それでは皆さん、御達者で。

第四計 以逸待労

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「長勺の戦い」──────曹沫の疲弊待ち戦術。攻撃を二度待って、強敵・斉軍に圧勝する。





 ♚ 魯と斉

 春秋時代前期の支那。後世儒教の祖・孔子【こうし:本名は孔丘(こうきゅう)】を生む事になる魯の国は、周王室とは同族の姫姓の諸侯国の一つである。
 そして周王朝創建の元勲の一人であり、周王朝初代・周武王【しゅうのぶおう:本名は姫発(きはつ)】の弟でもある、聖人・周公旦【しゅうこうたん:本名は姫旦(きたん)】の血統を継ぐ末裔である。
 その魯に北の隣国・斉が侵攻して来た。時は紀元前684年の事件である。
 魯では第16代国君・魯荘公【ろのそうこう:本名は姫同(きどう)】の即位から数えて10年目の治世の事であった。
 そして斉では前年の紀元前685年に、兄弟間の骨肉の後継者争いを制した公子小白【姓は姜(きょう)、氏は呂(りょ)、名は小白(しょうはく)】が、第16代国君に即位したばかりだった。
 この斉公室の後継者争いの経緯については【第二一計 金蝉脱殻】の故事(リンク先工事中)で語る。
 この姜小白こそが、史上最高峰の名宰相・管仲【かんちゅう:本名は管夷吾(かんいご)】や鮑叔牙(ほうしゅくが)等賢臣の輔弼を受けて、春秋最初の覇者となり、斉の全盛期を現出させる名君・斉桓公(せいのかんこう)である。


 斉は周王室とは異姓の諸侯ではあるが、その始祖は周文王【しゅうのぶんおう:本名は姫昌(きしょう)】・周武王の二代に軍師として仕えた天才的な兵略家で、前代の殷王朝を倒す最大の功労者となった太公望【姓は姜(きょう)、氏は呂(りょ)、名は望(ぼう)】である。斉の国はこの、周王朝創建の元勲・太公望の血統を継ぐ末裔である。
 斉の侵攻に対し、魯荘公は応戦しようとした。だが斉は強国であり、国力・軍事力は魯をも上回っていたので、まともに戦ったのでは勝算は見い出せなかった。





 ♛ 魯の壮士・曹沫

 そんな折に、魯の士(し)【※1】の階級である曹沫(そうかい)【※2】は、国難に際して魯荘公に謁見しようと、宮殿まで出向こうとした。
 だが郷人(きょうじん)【※3】は言った。


肉食の者【※4】が考え決める事だ。我等如きの与り知った事ではあるまい。」


 曹沫はそれに反論して、


「いや、肉食の者たちは見識なく、思慮も浅い。遠い先を慮る事が出来ない。」


と批判した。
 そして本来ならば、君主である魯荘公に拝謁出来る身分ではないのだが、危急の事態のせいか、魯荘公が聡明で度量が広かった為かは不明だが、とにかくも謁見が叶った。そこで曹沫は魯荘公に問い質した。


「君公は一体何を以って、斉軍と戦われるのでありましょうや?」


 魯荘公は答えた。


「衣食を決して独り占めしたりせず、必ず人々に分け与えておる。」


 それを曹沫は否定した。


「それは小恵(小さな恩恵)であって、全ての民に行き渡ってはおりませぬ。故に民は従わぬでしょう。」


 魯荘公は更に言った。


「神を祭るに嘘偽りを申さず、供物の犠牲(いけにえ)や玉帛(ぎょくはく)【※5】を誤魔化したりせず、ありのまま正直に捧げておる。」


 曹沫は再び否定した。


「それは小信(小さな信義)に過ぎませぬ。それでは神は、福を御授けにはなりませぬ。」


 魯荘公は三度(みたび)答えた。


「民の訴訟事を大小問わず、例え全てを明白に察する事叶わぬとしても、それでも必ず誠意を以って臨んでおる。」


 それを聞き、曹沫は言った。





後続  故事其之壹 ─ 乙

閉じる コメント(16)

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※1とかの部分は、もっと後で説明がされるってことですか?
予備知識ないから、ここだけ読んでもヽ(。_゜)ノ へっ?なもんで・・・^^;

それとお願いが・・・「甲」をもっと前にもってこれませんか?
書庫を開くと途中まで同じで長いから全部表記されてなくて、
同じ文言が続いてるでしょう?
今は未だ書庫が少ないから何とか解るけど、増えてきたら探すのがキツイ^^;

前ブログでも、どこまで読んだか解らなくなるので、コメ一覧で
自分のコメを探してから読むって作業してたんです^^;
ご一考願います(-人-)☆彡オネガイ

2012/7/1(日) 午後 4:36 栞

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再読したら、ぼや〜んと流れは解った^^

姫って姓があるんだ〜シランカッタ

>周武王【しゅうのぶおう:本名は姫発(きはつ)】
なんかカワイイ〜川* ̄д ̄*川ポッ
日本なら女の子の名前でも通りそう〜イイね!ヽ(*´∀`)ノ★非通知ポチ!

2012/7/1(日) 午後 4:41 栞

イイネ!ポチ、ありがとうございます。

まずは御要望に御応えして、ここの故事シリーズと、未読と思われる【第三計 借刀殺人】の故事其之壹のも全て、タイトルの前の方に「甲乙丙丁・・・・」を持って来ました。


>※1とかの部分は、もっと後で説明がされるってことですか?

ええ、実は今度の再開に当たって、前のと記事構成を変えようと思ったのです。
【※1】【※2】・・・・などの「※」の付いた箇所には、そこをクリックすると別記事が開けるようにリンクを貼ろうと思っています。
語句註釈専用の記事を拵えて。今はまだリンク貼ってませんが。
けどもし訳が解らずスッキリしない点があるなら、今すぐにでも答えますよ。


>姫って姓があるんだ〜シランカッタ

現代の支那じゃ聞かないですが。その姓から数多くの氏に枝分かれします。


>なんかカワイイ〜川* ̄д ̄*川ポッ 日本なら女の子の名前でも通りそう〜

そうですか?(笑)肖像画見れば、髭生やした渋いオッサンですけどね(大笑)。

2012/7/2(月) 午前 8:55 ZODIAC12

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この会話は、何をもって戦うかという問いに対する答えとしては、異例な答えに見えるのですが、魯荘公は、戦いを決するものは、民の支持をうるかどうかということだと考えているということでしょうか。ここで民というのは、一般の民で、軍の兵士を指しているのではないですよね?もちろん、広い意味では、民の支持と同じ気持を兵士も持つでしょうが。

とにかく、この会話は、君主として、その姿勢を述べているところが非常にかっこ良く思えますね。またそれを聞いて忠の気持ちを答えた曹沫もかっこよくて、まるで日本人のようですね。

2013/1/24(木) 午後 2:35 [ さざんか ]

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現代人の我々から見れば、奇異に感じられる問答ですが、現代とは大きく異なる、当時の価値観や通念を物語っていますね。
民と言っても徴兵で軍に召集される訳ですから、一般民衆と兵士(幹部クラスではなく)はほぼ同義だったのではないでしょうか。


これより時代も少し下れば、『孫子』『呉子』に代表されるような、合理的でドライで、謀略を用いた科学的な戦争へと変質して行きますが、この頃はまだ素朴な古代的感覚、つまり呪術的迷信や、礼制に基く戦の作法や仕来りとかが、色濃く残っていました。
まだまだ力や智謀よりも、徳で競っていた側面が残っていたのです。
日本史上で言えば、戦国時代へ移行する前段階の、室町時代によく似ています。

2013/1/26(土) 午後 2:10 ZODIAC12

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おお、なるほど、そうだったのですか。
まだ徳によって治めるという、いわゆる祭祀の雰囲気も残っていたのでしょうね。
兵士も民が徴兵されて戦っていたのですね。たしかにそれはそうでしょうね。
よくわかりました。

2013/1/27(日) 午後 1:02 [ さざんか ]

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ええ、『孫子』などの兵法書にも「廟算(びょうさん)」という言葉が出て来ますが、これは一言で言えば「軍議」の事です。

「廟」とは「廟堂」の事で、祖先の霊や位牌を祀ってある霊堂ですね。古代では戦争を始めるに当たって、君主が自身の祖先を祀る廟に皆を召集して、軍事会議を催したのです。

わざわざ廟堂でやる位ですから、現代みたいな純粋な会議ではなくて、神託を伺うとか、祖先の霊に報告したりとか、神霊の祝福を授けてもらったりとかの祭祀の要素もあったのかも知れません。


民衆の兵役もパートタイム的なものだったでしょう。農業とかを長い事放置出来ませんから。

常備軍も一応あったかとは思うのですが、後世に比べれば規模も小さいですし。

後は大部分、貴族階級の抱える私兵団の連合体に頼っていたのです。

2013/1/28(月) 午後 0:01 ZODIAC12

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そのように聞くと、この頃の支那はなんとなく親近感を覚えますね。もっとも、実際にその頃の支那人と今の支那人は完全に人種が違うという話もありますからね。
なんか支那という国は、国というには実態がわけの分からない部分がありますね。

2013/1/28(月) 午後 6:03 [ さざんか ]

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三国時代でほとんどが死に絶えて、次の五胡十六国時代〜南北朝時代という400年近い乱世で、多くの異民族と入れ替わったり、著しく混血が進んだという話ですね。

本当かどうかは定かではないですが、その五胡十六国時代〜南北朝時代を制した隋・唐は、どちらも鮮卑人という、元は北方の遊牧民族だそうです。

2013/1/29(火) 午後 7:47 ZODIAC12

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そうなのですか、それではほんとに中国4千年とか言うのは、国家だけのみならず、民族すら継続していませんね。
隋や唐は支那の代表のような国家ですが、結局異民族ですか。だったら、元がモンゴルの異民族だと、何か特別に他民族支配のように言われるのは意味が無いですね。ホントは皆同じようなものですね。

ところで、こんなふうに民族が入れ替わると、それにともなって文化も新しい文化の流入と古い文化の破壊が繰り返されて、結局いい物が育たなくなるのではないでしょうか。日本は古い文化を保ちながら、新しい文化を取り入れ咀嚼しましたが、これは日本独特の和の個性とも言えますが、それと比べて、支那大陸は、今は文化の破壊の跡が残っているだけのような惨憺たる有様ですよね。
ほんとに日本は恵まれていたと思いますね。

2013/2/1(金) 午後 1:33 [ さざんか ]

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信憑性が何となく高いですよね。

三国時代に人口が激減した為に、曹操が中原の外から異民族を呼び込んで以来、中原に住み着いたのがキッカケだとか。
以来何代にも亘って住んでいる内に漢人化していったり、五胡十六国以来中原で王朝を建てた異民族たちも、徐々に風習が漢人化して行ったりで、元からの漢人との混血が進んだのかも知れません。

衰退期の古代ローマみたいなものです。
ゲルマン民族の大移動で、蛮族がローマに大量に入って来たりして、混血化が進んだようなものです。
五胡十六国時代とゲルマンの民族大移動は同時期です。五胡十六国時代は支那大陸における民族大移動ですね。

2013/2/2(土) 午前 11:23 ZODIAC12

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文化は一応連続性はあるように思えますが、寧ろ文化よりも政治の方にこそ連続性がないですね。
政治はブッ壊しては建て直しの繰り返しで、安定しませんね。

前時代の政権が傾くと、成り上がり者たちが暴れ出して、前時代の政権を潰します。
その後残った候補者たちでバトル・ロワイアルをして、最後まで勝ち残った者が新しく天下を取る。
そして前時代の政権を必要以上に悪く言う・・・・本当に生き地獄みたいな社会ですよ。共存共栄の意識が希薄で・・・・。

2013/2/2(土) 午前 11:24 ZODIAC12

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なるほど、異民族の漢人化によって、何となく中国四千年のイメージが続いているのですね。
それにしても、政権が潰れては、バトル・ロワイアルで新政権の繰り返しは、或る種の支那大陸の持つ、なんと言ったらいいか、その土地の持っている霊的カルマみたいなものがあるのでしょうか。
昔も現在も、確かに生き地獄的な場所ですね。
最近中国人の鳴霞という人の話している動画見ましたが、農村はほんとに生き地獄ですね。

2013/2/5(火) 午後 0:17 [ さざんか ]

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何千年も長く続いているイメージがあるのも、舞台が同一の地で、文字や言語が同じで(時代によって若干の差異はあると思いますが)、風習や文化とかもほとんど同じだからではないでしょうか。
太古以来の歴史観や学問も受け継いでいますから。

現代と比べてどちらが酷いかとも思いますが。
私も前々から支那は、神霊の加護が失われているのではないかと思えるのですよ。
この国、というか大陸は何かに呪われているのでは??

農村の悲劇とかは聞いた事があります。
どうも都市住民と比べて差別されてたり、都市への自由な移住が出来ないとか。

2013/2/6(水) 午前 10:43 ZODIAC12

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神霊の加護は確かに失われているのかもしれませんね。
人間に生まれ変わりというのがあるとしたら、何となく悪業を持った人が類を持って集まっているような、そんなイメージもありますね。

2013/2/15(金) 午後 1:46 [ さざんか ]

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まったくです。汚れた魂を持ったクズ人間たちの掃き溜めみたいな国です。

2013/2/16(土) 午前 9:04 ZODIAC12


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