YAMINABE the Second Operation

この11年間の数多くの思い出を携え、私は新たな旅へと出発します。それでは皆さん、御達者で。

第四計 以逸待労

[ リスト ]

承前  故事其之壹 ─ 乙





 何故止めるのか怪訝に思わせながらも、曹沫は兵車から降りて、敵軍の兵車の轍(わだち)の跡を調べ出した。
 そして確認が済んでから、曹沫は兵車の軾(しょく)【※7】に上り、敵軍の様子を眺め出した。


 そして様子見を終えるや、可と判断し、追撃を命じた。この追撃戦により、魯軍は更に決定的な打撃を斉軍に与え、大戦果を得る事に成功した。
 曹沫の采配により、魯は強国・斉を相手に、奇跡的な大勝利を果たしたのであった。





 ♝ 「長勺の戦い」の勝因

 戦勝後に魯荘公は、曹沫を宮中に召して何故勝てたのかその理由と、不可解な行為の訳を尋ねた。
 後者はすなわち、先の一戦において、敵軍が太鼓を三度打ち鳴らすまで攻撃を掛けさせなかった事と、敵軍を大破した直後に、すぐには追撃をせずに何やら調べていた事の二点である。
 それに対し、まずは「何故勝てたのか?」について、曹沫は答えた。


「そもそも戦とは、気力こそが肝要でございます。
 一度目の太鼓でその気力を湧き立たせ、二度目の太鼓で衰え、三度目の太鼓で枯れてしまいます。
 故に一度目の太鼓では、まずはこれに応じず、二度目の太鼓でもまだ応じませぬ。
 そうすると敵の気力は衰えます。三度目の太鼓を打った時には、最早敵は疲れ果て、気力は枯れております。
 敵軍は枯れ果て、反対に我が軍は気力が満ち満ちております。それゆえに我が軍は勝てたのでございます。」


 続いて、追撃前の不可解な行為の疑問にも、曹沫は答えた。


「斉の如き大国は、測り難いものがございます。
 それ故に臣は斉軍が敗走を装い、我が軍を誘き寄せ、伏兵を仕掛けられる事を懸念したのでございます。
 そこで臣は敵軍の兵車の轍(わだち)の跡を調べ、また退却する敵軍の様子を観察したのでございます。
 轍の跡は乱れており、敗走する敵の動きも足並みが整然としておらず、軍旗は靡いており、先を争って逃げている様子が見て取れました。
 故に我が軍を誘う為の偽りの退却ではなく、本物の退却であると確信するに至り、追撃を掛けさせたのでございます。」


 最初は斉軍が優勢であり、斉が「逸」で、魯が「労」であった。だが敵の疲弊を辛抱強く待って、曹沫は自軍を「逸」に、斉軍を「労」の立場に逆転させたのであった。
 曹沫の以逸待労策による大勝利であった。





 ♞ 「長勺の戦い」その後

 しかしその後は残念な事に、曹沫も思ったようには振るわなかった。
「長勺の戦い」以降も、曹沫は将軍として魯軍を率いたものの、名宰相・管仲の執政下で更に強大化された斉軍には勝てなくなって行った。曹沫は斉軍と三度戦い、三度とも敗れ去った。
 これ以上は限界と見切りを付けた魯荘公は、とうとう斉との国境近くにある遂(すい)という邑を差し出して、斉桓公に講和を申し出た。
 斉桓公はそれを承諾し、斉領内にある柯(か)という地で、魯荘公と会盟(かいめい)【※8】を催した。
 魯斉両国の君主始め、両国の文武百官が居並ぶ中、壇上にて魯荘公が遂邑を献上する旨の誓約書を書こうとした矢先、曹沫は突然壇上まで駆け上がって来た。
 そして曹沫は斉桓公に近付き、忍ばせていた匕首【あいくち:短剣の事】を抜き出して、斉桓公に突き付けた。





後続  故事其之壹 ─ 丁(完結編)

閉じる コメント(11)

アバター

凄いどんでん返しだ( ̄◇ ̄;)

こんな事を仕出かして死ぬ覚悟か。・゜・(ノД`)・゜・。

ナイス

2013/1/2(水) 午後 3:11 栞

顔アイコン

ここへの初コメ&初ナイス!、どうもありがとうございました!<(_ _)>


驚きの予想外な展開でしたか?勿論その場で討たれる覚悟だったでしょうね。

2013/1/3(木) 午後 1:44 ZODIAC12

顔アイコン

魯荘公は地味ではあっても、曹沫を信頼して、将軍として取り立て、さらにその限界もきちんと判断したのは、けっこう立派ですね。おそらく魯の国では、曹沫以上の人はいなかったのでしょう。
最後の意外な結末は、曹沫も敗戦が重なり、期待に添えないことを心苦しく思いながらも、魯荘公の信頼への感謝の思いと、忠誠心で、一か八かで行ったのでしょうが、これってその時はよくても、後で仕返しされないのでしょうかね。
それが心配ですね。一途な忠義は心を打ちますが、大国に対してそれで済むのだろうかと思います。

2013/2/5(火) 午後 0:53 [ さざんか ]

顔アイコン

ナイスです。

2013/2/5(火) 午後 0:53 [ さざんか ]

顔アイコン

御待たせしました。まずはナイス☆ありがとうございました。


魯荘公は魯の歴代国君の中でも良質な部類でした。
才気煥発といったタイプではなかったですが。

仰るように曹沫は、魯荘公の破格の厚遇に応える為にやったんだと思います。
そしてこの時に本当に死ぬ覚悟だったのでしょう。

この時の魯には、曹沫以上に優れた人材はいなかったでしょうね。
だからこそ魯荘公は実際の切り回しを曹沫に一任したのでしょうし。


>これってその時はよくても、後で仕返しされないのでしょうかね。

それは次回の完結編を御覧になれば、結末は判ります。(^^)ノ

2013/2/7(木) 午後 6:18 ZODIAC12

顔アイコン

魯荘公と曹沫の信頼関係を見れば、いかにもいい人間たちだという気がしますね。日本人からすれば、矢張り自分の命を捨てても忠義を尽くそうとする臣下の話というか、君臣の良い関係の話は、感動しますね。
では次を見てみます。

2013/2/15(金) 午後 2:28 [ さざんか ]

顔アイコン

この魯荘公と曹沫の君臣は、日本人にも共感出来る所でしょう。

二人の不運は斉という大国と隣接していたのと、管仲と言う何百年に一度現れるか現れないかという、偉大で天才的な大政治家と同時代だったという事かも知れません。

2013/2/16(土) 午前 9:26 ZODIAC12

顔アイコン

たしかにそうですね。相手が大きすぎですね。
しかし不運とはいえ、最悪ではないですね。

2013/2/17(日) 午後 11:13 [ さざんか ]

顔アイコン

ええ、そうですね。相手が道義を弁えた君主と宰相であったのが、不幸中の幸いでしたね。

2013/2/19(火) 午後 9:19 ZODIAC12

顔アイコン

ほんとに、ひどいことにならずにホッとしました。

2013/3/2(土) 午後 9:40 [ さざんか ]

顔アイコン

ええ、常にこうだという訳ではないのですが。
何しろ一般的に支那人は執念深いですから。

2013/3/3(日) 午前 9:48 ZODIAC12


.
ZODIAC12
ZODIAC12
男性 / A型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

ブログバナー

過去の記事一覧

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
友だち(1)
  • yatugatake
友だち一覧
検索 検索

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン
コンタクトレンズで遠近両用?
「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」
無料モニター募集中!
お肉、魚介、お米、おせちまで
おすすめ特産品がランキングで選べる
ふるさと納税サイト『さとふる』
ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事