YAMINABE the Second Operation

この11年間の数多くの思い出を携え、私は新たな旅へと出発します。それでは皆さん、御達者で。

第一計 瞞天過海

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承前  故事其之壹 ─ 甲





 李牧が守備軍の将として軍政を布いていた頃は、劇的な展開はなく地味だったにしても、取り立てて窮乏する事もなく、それなりに満足した暮らしを送れた。
 だが新しく将が交代してからは、悪くなる一方であったので、李牧の復帰を望む声が強まって行った。





 ♜ 李牧の復帰

 その現地の声は趙中央の宮廷にまで聞こえ、その声を無視出来なくなった趙孝成王は、李牧に再び雁門まで赴任するよう要請した。
 だが李牧は病気と称して自邸に引き籠るようになり、要請を拒否した。
 そんな李牧を趙孝成王は重ねて説得し、遂には強く命じて強引に復帰させたのである。
 それに際して李牧は趙孝成王に対して、前以て了承を取り付けた。


「大王様に申し上げたき事がございます。
 どうしても臣(しん)【※8】を用いようとなされるならば、臣は以前と同じ通りに致す所存でございます。
 それでも宜しいと仰せられるのでございましたら、臣は敢えて君命を奉じ、彼の地へ赴きましょうぞ。」


 それを聞き、趙孝成王は許した。こうして李牧は、再び雁門の守将として着任するに至った。


 そして李牧は着任後、趙王に言った通り、以前と同じく匈奴と直接戦う事を、ひたすら避け続けた。
 以後数年間は、以前と同様に損害も出さず、雁門の軍民は再び大過なく過ごせるようになった。
 李牧の再就任以降、匈奴軍は戦果や戦利品を何も獲得出来なくなった。それと同時に匈奴は、李牧はやはりただの臆病者に過ぎないと、益々侮るようになった。
 守備軍将兵たちの方は、毎日李牧より褒賞を賜るものの、戦って戦功を挙げる機会に恵まれなくなったので、体力と気力を持て余すようになり、匈奴と一戦交えたいものだと言い出すようになった。
 そんな状況を見取った李牧は、初めて軍事的な行動に出始めた。
 まず堅固な物を選んで、兵車を千三百乗(千三百台)程も揃えた。
 そして騎馬は優れた馬を選び抜き、一万三千頭程も揃えた。
 そして人の方は、精強な士を五万人、強弓の射手を十万人程も揃え、戦の訓練をさせた。





 ♝ 本格的な反攻

 調練が済んでから李牧は、城市外に家畜を自由に放牧させ、田畑もあちこちで耕作させた。
 ある時に匈奴が、それ程多くもない兵力で侵攻して来た。守備軍は一旦干戈を交えた後、敗走して行った。
 だがこれが李牧の策略であった。李牧は自軍にわざと負けさせたのである。
 そうして城市外で牧畜や農耕をしていた数千もの農牧民を、敢えて保護するでなく、匈奴の拉致・連行、あるいは略奪や殺戮するに任せた。
 単于(ぜんう)【※9】はこれを聞くや、大軍を率いて進軍して来た。目一杯に稼げる絶好の機会だと踏んだからである。
 李牧の策謀により、単于は「趙軍は弱く、楽に勝てる。」と侮るようになったのである。





後続  故事其之壹 ─ 丙(完結編)

閉じる コメント(15)

趙は秦に劣らぬタレント揃いですよね。
ただ大きく差が開いて埋められなかったのは、王の器でしょうか。
臣下が如何に優秀でも使いこなせずジリ貧になってしまいますよね。

2012/7/29(日) 午後 11:43 [ もたんもぞ ]

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ここ暫くでしたね!携帯からだと見えないようで、不便な思いをさせてしまってますね(^^;A)。


秦と趙と斉の三国は、軍事が特に強かったですよね。
この頃には楚は、どうも図体がデカイだけの老大国に成り下がっていたような気がしなくもないですね・・・・(^^;)。

「タレント」と言いますか、「スター的武将」の事ですよね?それとも武官だけでなく、文官も含めてるのでしょうか?


>ただ大きく差が開いて埋められなかったのは、王の器でしょうか。

>臣下が如何に優秀でも使いこなせずジリ貧になってしまいますよね。

君主の質の差を秦と比べると、趙は武霊王以後は見劣りするようになりましたよね。優れた臣下が輔佐してはいましたけど。
もたんもぞさんは御存知だとは思いますが、秦と趙はどちらも同姓の「嬴(えい)」で、先祖が共通だと言いますね。

趙のスター的存在と言えば、何と言っても藺相如・廉頗・趙奢の三人でしょうね。
李牧もこの三人と同世代だったら、果たしてどれだけ活躍出来た事でしょうかね?

2012/7/30(月) 午後 1:12 ZODIAC12

ZODIAC12さん、すみません(-.-;)
携帯で閲覧できるものとできないものがあるようで。
とりあえずできるものから投稿を。
ただZODIAC12さんの記事は時とともに古くなるような類のものでないので、
パソコンで見られる時はそちらから投稿しようと思います。


前のコメント、タレントとは英語の直訳で、才能ある人という意味ぐらいに使いました。
趙の李牧は悲劇の名将ですね。
秦はついに彼には戦場では勝てなかった。

銀河英雄伝というアニメがありますが、一方の雄ヤン提督は、李牧がモチーフなんでしょうか。

魏も秦、趙に劣らぬタレントの宝庫ですが、
呉起、はんしょ、商おうなどこどごとく使いこなせず、他国に流出してしまったのは痛い。
彼ら3人をそれぞれ使いこなせれば、天下を取ったのは魏かもしれません。

2012/7/31(火) 午前 8:51 [ もたんもぞ ]

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本当にヤフーのシステムは不備が多いみたいで(ーー;)。
どうでもいい事や、やらんでいい事はしっかりやるくせに!!


「才能ある人」という意味なら、武官だけじゃなく文官も含みますね。
仰るように、秦はまともな戦では、とうとう李牧に勝てませんでした。だから謀略工作で李牧を抹殺しました。
その話はこれから【第三計 借刀殺人】の書庫でアップします。


田中芳樹原作の『銀河英雄伝説』ですか。ゴメンナサイ!その作品は原作もアニメも全く観た事ないもので、全く知らないんですよ(^^;)。
田中芳樹のウスラ左翼でDQNな思想や作風が嫌いなもので(笑)。
せいぜいアニメ版の『薬師寺涼子の事件簿』を観た位です(^^;)。

2012/7/31(火) 午後 10:24 ZODIAC12

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>呉起、はんしょ、商おうなどこどごとく使いこなせず、他国に流出してしまったのは痛い。

そうですね。どういう訳か魏は、それら一流、超一流クラスの人材を見抜けず、みすみす他国へ行かせてしまったのですから、何と馬鹿な事したのかと思いますね。

魏の「タレント」と言うと、やっぱり魏文侯の代で活躍した人材が思い浮かびますね。
引き合いに出した呉起を始め、李悝、西門豹、そして楽毅の祖先の楽羊なんかでしょうね。

別の計略の書庫で、呉起、西門豹、楽羊を主人公にした話を書きます。
旧ブログでも書きましたので、その復元をするのですが。

2012/7/31(火) 午後 10:25 ZODIAC12

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李牧が直ぐに求めに応じて復帰しなかったのは、
外野からの横やりで王が変心しないよう、念を押すつもりだったんでしょうね。

なんとなく、このあたりの呼吸や駆け引きってドラマや小説なんかにも出てきそうなシーンです^^

次回、いよいよ反撃だ〜ヽ(*´∀`)ノ★ぽち

2012/8/9(木) 午後 7:32 栞

ポチどうもありがとうございます!


>外野からの横やりで王が変心しないよう、念を押すつもりだったんでしょうね。

世界史上にはよく見られる光景ですね。本音では最終的に承諾する気でいても、まずは要請を何度も辞退してみせるという。

それで相手の本気度を測ったりとか、「自分から頼み込んだんじゃない、そっちから何度も頭下げて来たんだから・・・・」という立ち位置を作って、自分を有利な立場に置く為の駆け引きとして、度々使われてますね。


P/S
ところで・・・・リンク先の語句註釈の中の、「胡服騎射」の項、解り辛くないでしょうか?

2012/8/10(金) 午後 8:55 ZODIAC12

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>胡服騎射

ん?どれどれ〜((((((((((っ´▽`)っ

いや、大丈夫だと思いますよ^^
すいません。知ってるところはリンク先を読んでなかったです^^
逆に知ってるところでも、どんな説明してるのかなぁ〜って見てる時もあるし(時間ある時だけど)

もちろん初めて見た言葉は見てますけどね^^

あ、そういえば語句注釈記事にナイスし忘れてた。
ポチって行きます〜^^/

2012/8/11(土) 午後 6:07 栞

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そうでしたか・・・・リンク先の語句註釈記事は、一時掲載なんで、早かれ遅かれいつかは消して、再びアップし直すつもりです。
だからコメント欄を全部閉じてある訳でして。

ですから、ボタン押されなくとも良かったのですが・・・・(^^;A)。
まあそれはともかく、押して下さり、とりあえずは御礼申し上げます。<(_ _)>

2012/8/12(日) 午前 8:38 ZODIAC12

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一見弱弱しいが実は油断大敵という事ですね。最も民主党は本当にヘタレですが。傑作&TBします。

2012/8/20(月) 午後 3:57 千葉日台

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『孫子』の冒頭でも「強くても弱いように見せ掛けて、相手を油断させろ」という趣旨の一節がありますからね。

それが本物か偽装かを見極めなければなりません。ミンスの場合は本物ですから・・・・・・(ーー|||)。

2012/8/21(火) 午前 8:19 ZODIAC12

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なんか、やっと長年の計画が実る所まできましたね。
王が要らんことしなければ、もっと早くできたことでしょうに、でも一応達成の機会をもう一度得ることができて、本当に良かったですね。
それにしても、シナ人の長期計画は、大したものですね。しかもここぞというときに、農民の一部を囮にして、敵の蹂躙に委せるとは、計画の長期なのもすごいですが、農民を囮にするのは、きっと日本人には、深謀遠慮の将軍だとしても、出来ないでしょうね。

2012/8/24(金) 午後 0:05 [ さざんか ]

ここも御待たせしました。


この趙孝成王は御世辞にも名君とは程遠かった君主でしたからね・・・・。
聡明さに欠けていたので、諸々の真実が見抜けなかったのです。

もうこの頃の趙は滅亡が近付いて来ており、国自体が衰退して来ていたのですよ。
だから李牧一人の才覚や努力だけでは、もうどうにもならない処まで来ていたのでしょう。
それでもこの作戦は最終的には実を結ぶ事になって、それは良かったのですが。

いくら作戦の為とは言え、領民を犠牲に出来る辺りは、確かに違和感を感じたりもしますが。
そのように感じるのも、私が日本人だからかも知れません。
日本史上でそんな非情な作戦を実行した武将や軍人て、誰かいたかどうか・・・・思い付きませんが。

2012/8/26(日) 午後 5:10 ZODIAC12

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確かに、そうですね。日本人でそんな計画を立てれば、それこそ信頼を失いますね。それに計画でなく、偶然に農民に被害を出しても、やはり信頼を失いますよね。もっとも、日本人の場合は、敵自体が、農民を襲うということをしないでしょうけど。これは日本人が同じ民族の国だから、考えられないことでしょうね。日本だと、この支那の作戦と同様なものを考えるなら、自分の部隊を囮に使うような場合かも知れませんが、これも考えられないですよね。
日本は、道義が重んじられる国ということを、改めて感じますね。

2012/8/31(金) 午後 6:46 [ さざんか ]

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日本でも戦国時代までは、意図的な計画と言う訳でもないでしょうが、戦勝後の現地での、住民に対する略奪暴行とかは数え切れない程あったでしょうね。
それでも支那人や朝鮮人に比べれば、嗜虐性や猟奇性がほとんどない分、まだずっとマシだったかも知れませんが。

ただ・・・・・信長とかもそうですが、「根切り」とか「撫で斬り」とか言って、必要に応じて女子供まで皆殺しにした事例はあるみたいですよ。
相手の領主の面子を潰す為とか、抵抗が余りに執拗で激しい場合とか。
けどそんな頻繁にやってたとまでは思えませんから、余程の事でしょうし、例外的な事だったのでしょうね。

囮戦術を使う場合でも、日本だとさすがに民間人を使ってたとは思えません。
仰るように、囮に使ったのは自軍の部隊だけでしょう。

2012/9/2(日) 午前 9:35 ZODIAC12

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