YAMINABE the Second Operation

この11年間の数多くの思い出を携え、私は新たな旅へと出発します。それでは皆さん、御達者で。

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 さて、久々に自作漢詩が出来上がりました。出来具合はまあ・・・(^^;)。
 漢詩は創るのが和歌以上にややこしくて困難なので、やっとこさ三作目です。



 前記事でも御伝えしましたように、大雪の降り頻る夜道を歩きながら帰宅した時の事を題材に、本記事では漢詩で表現してみました。
 形式は五言律詩(仄起式・平韻)です。一作目が七言絶句(平起式・平韻)、二作目が五言絶句(仄起式・仄韻)と、どちらも絶句(全四句分)でしたが、今回初めて律詩(全八句分)に挑戦してみました。各句毎に五字ずつの全四十字の形式の詩です。
 
 
 それでは以下の通りに白文の画像を掲載します。






イメージ 1





 次に訓読や平仄配列、各字ごとの韻目を表示した画像を掲載します。





イメージ 2





 さて、前二作は五言(各句五字ずつ)と七言(各句七字ずつ)の違いがあれ、どちらも絶句(全四句)でした。
 今作のは律詩なので、絶句とは些か勝手が違います。

 何しろ偶数句(第二・四・六・八句目)全ての末尾で韻を踏まねばなりません。
 しかも全部同じ韻でないとアウトですから、そこは絶句よりも厳しいです。

 今作は五言だったから偶数句だけでしたけど、もし七言律詩だったら偶数句全ての末尾に加えて、最初の第一句末尾でも同韻を踏まねばなりません。
 四ヵ所五ヵ所も同じ韻の字を置かなきゃならないんですから、字の選定で頭痛めますよ・・・・


 
 また律詩には絶句にはない「聯(れん)」という概念があります。
 聯とは律詩における、二句毎の纏まりの単位です。律詩は八句あるので、全部で四つの聯がある訳です。

 それぞれ第一・二句を「首聯(しゅれん)」又は「起聯(きれん)」、第三・四句を「頷聯(がんれん)」又は「前聯(ぜんれん)」、第五・六句を「頸聯(けいれん)」又は「後聯(こうれん)」、第七・八句を「尾聯(びれん)」又は「結聯(けつれん)」と呼びます。

 この場合の「首」とは「くび」、つまり「ネック」の意味ではなくて「こうべ」、つまり「頭全体」「ヘッド」の意味です。

「頷」は普段は「頷く(うなずく)」と使われますが、「顎(あご)」という意味もあります。

「頸」は「くび」とも読み、これが「ネック」の意味です。

「尾」は言うまでもなく「シッポ」とか「終わりの部分」という意味です。

 すなわちこれらの聯の呼称は、人体の部位に見立てている訳です。

 律詩の厄介な点は平仄の配置や、押韻や、その他あらゆる禁止事項は絶句とほぼ同じなのですが、絶句にはない厄介なルールが、頷聯(前聯)と頸聯(後聯)がそれぞれ対句となっている事です。
 すなわち第三句目と第四句目、第五句目と第六句目をそれぞれ、対句として対照的な構成にしなければなりません。
 しかも平仄の配列と押韻も同時に守らねばならないので、何度も何度も没にしなければなりませんでした(ーー|||)。
 
 

 さてそれではいよいよ、ここから詩文を各句毎に上段を原文(緑色の大文字)、中段を読み下し文(黄土色の文字)、下段を現代語訳(濃いピンク色の文字)の順に書き記して行きます。
 それと並行して、各句毎の解説もして行きます。
 
 
 
 
 
詩題:
臘 月 夜 雪 中 独 行

臘月(ろうげつ)の夜、雪中(せっちゅう)を独り行く

十二月(陰暦)のある夜、雪の降る中を独り歩いて行く
 
 
 
「臘月」とは十二月の異称の一つです。
 前記事でも言いましたように、この詩は昨年の平成30(2018)年1月22日(月)の晩の情景です。
「1月なのに何で臘月(12月)なんだ?」と思われるかも知れませんが、平成30(2018)年1月22日は旧暦(陰暦)で言えば、2017年12月6日に当たります。つまり旧暦を基準にしてみました。

 そして十二月の異称には、臘月の他には「丑月(ちゅうげつ)」「季冬(きとう)」「晩冬(ばんとう)」「苦寒(くかん)」「大呂(たいりょ)」「玄枵(げんきょう)」等があります。
 
 
 
 
 
首聯(起聯)
 
第一句:
凛 冽 玄 冬 晩

凛冽(りんれつ)たる玄冬(げんとう)の晩

寒さの厳しい冬のある夜
 
第二句:
連 青 女 向 家

青女(せいじょ)を連れ、家へ向かふ(むかう)

青女(雪)を連れながら、我が家へと向かい歩く。
 
 
 
「凛冽」は「凛烈」とも。「玄冬」とは冬の異称の一つです。
「玄」は「黒」という意味もあります。これは五行説で五種類の原色(青・赤・黄・白・黒)の内、黒が冬に対応するからです。
 それと対比して他の季節は、「青春」「朱夏」「白秋」とも言います。

「青女」とは雪の異称の一つです。元は支那の神話や伝説上の女神です。霜や雪を司る女神である事から、雪そのものをも意味します。
 鬱陶しい雪を浴びながら夜道を帰ってる訳ですが、そう思うだけでは味気なく、些か癪なので、筆者も男ですから、女神を連れ合いにして一緒に歩いている(つまり女神と帰り道のデートをしている)という意味も含ませました(笑)。
 
 
 
 
 
頷聯(前聯)
 
第三句:
上 天 成 漆 黒

上天(じょうてん)は漆黒(しっこく)を成し

夜空は漆黒の色に染まり
 
第四句:
街 路 咲 銀 花

街路は銀花(ぎんか)が咲く

街並みは銀花(雪)が真っ白く咲き誇っている。
 
 
 
 さてと、いよいよこの頷聯(第三・四句目)と次の頸聯(第五・六句目)とで、対句を創らねばなりません。
「上天」と「街路」、「成」と「咲」、「漆黒」と「銀花」がそれぞれ対応する組み合わせです。

 四句目の「銀花」とはこれも「青女」と同様、雪の異称の一つです。他には「銀華(ぎんか)」「素雪(そせつ)」とも。
 要は雪の事ですが、漢詩には「同字重出の禁」というルールがありまして、一つの詩の中で同じ字を使うのが禁止されています(畳語(重語)とかは別ですが)。

 なので素直にどちらも「雪」と言いたかったのですが、平仄の配置と字数の関係の他に、一回しか使えない以上、別の呼び方を用いるしかないのです。
 そこで二句目では「青女」、四句目では「銀花」と表現しました。

 そしてこの頷聯(前聯)では、「黒と白の色の対比」を意図しました。
 空は夜だから真っ黒(と言っても雪が降ってたので実際は白みのボンヤリ掛かった灰色でしたが)で、地上はそれとは対照的に真っ白だったという、光景の色彩的なコントラストを表現してみたつもりです。
 恰も真っ黒な墨から真っ白い綿が垂れ落ちて来たのを連想させる、そんな印象を伝えたかったのです。
 
 
 
 
 
頸聯(後聯)
 
第五句:
昔 有 童 愉 積

昔、童(わらべ)有り、積もるを愉(たの)しむ。

その昔、雪の降り積もって行く様を、わくわく面白がってた子供がいた。
 
第六句:
今 更 壮 悩 遮

今、壮(そう)に更はる(かわる)、遮(さえぎ)らるるを悩む。

そんな子供も今や、雪で行動を妨げられる事を思い悩むような大人へと変わってしまった。
 
 
 
 ここも対句となっていまして、「昔」と「今」、「有」と「更」、「童」と「壮」、「愉」と「悩」、「積」と「遮」がそれぞれの組み合わせです。
 ただ対照を成させるだけでなく、平仄と押韻も考えながら創るのに苦労しました。
 
 
 
 
 
尾聯(結聯)
 
第七句:
幼 情 消 已 歎

幼き情(こころ)、已(すで)に消ゆるを歎(なげ)き

大人となり、無邪気で純粋だった頃の童心を、既に失ってしまった事を嘆き
 
第八句:
恨 歩 草 廬 遐

恨めしく歩く、遐(とお)く草廬(そうろ)へ

雪をただ恨めしく思いながら、遠く我が家を目指して歩いて行く。
 
 
 
 第八句の末尾(押韻部分)の「遐(か)」は普段見慣れない字だと思いますが、「はるか(遥か)」「とおい(遠い)」という意味があります。

 他の押韻の字「家」「花」「遮」は全て下平声の六麻の韻目の中から選んだものですので、運良く六麻の韻目の中から、この字を見付ける事が出来たので採用しました。

「遠」の字だと下平声の六麻ではなく上声の十三阮、つまり違った韻目の字を使う事となるのでアウトとなりますから。

 八句目の「草廬」とは草庵、つまり草葺きの粗末な家の事ですが、自分の住居を遜って言う呼び方でもあります。
 言うまでもなく筆者の自宅の事ですが、前出の「同字重出の禁」の制約から、既に二句目の末尾(押韻)部分で「家」の字を使っていますので使えません。なので「草廬」と表現しました。

 そしてこれまた言うまでもない事ですが、筆者の家は文字通りの「草廬(草葺きの粗末な家)」ではありません(笑)。
 
 
 
 
 
 以上です。律詩は初めての挑戦でしたが、やはり漢詩は一首創り上げるのにつくづく苦労します。
 まだ5月下旬だと言うのに、昨年と同様、もう夏のような暑さを感じられるようになりました。


 そんな今時分に、何とも季節外れな題材ですが、昨年の平成30(2018)年1月22日(月)の事、この日は数年に一度あるかないかの大雪が降り、車が動かせない程に深く積もりました。
 この日は職場へ朝出勤した時は車で通勤しましたが、帰りは大雪のせいで車が動かせなくなってしまいました。
 なのでやむなく車を職場に置いたまま、職場から歩きで帰宅する羽目になりましたよ(^^;)。


 そんな経緯を思い浮かべながら、詠んだ短歌は次の二首です。
 
 
 
 
 
一首目:
うくおもふ ゆきおつよみち あゆむなか いとけなきひぞ おもひいださる
 
≪憂く思ふ(おもう) 雪落つ夜道 歩む中 幼き日ぞ 思ひ(おもい)出(いだ)さる≫
 
雪の降り頻る夜道を、煩わしく思いながら(職場から自宅まで)歩いて帰っている最中、(雪が降ると無邪気に楽しい気分になっていた)幼い時分の事が思い出される。
 
 
 
 
 
二首目:
しろたへの ゆきよろこびき かのわらべ いまはかはりて うらめしきかな
 
≪白妙(しろたえ)の 雪喜びき 彼の童 今は変はりて(かわりて) 恨めしき哉≫
 
嘗ては雪を喜んでいたあの子供(少年時代の筆者自身)も、大人となった今ではすっかり心持ちも変わってしまい、(今は只々雪なんか降って欲しくないのにと)恨めしく思うばかりだなあ。
 

【註:「しろたへの(白妙の)」は次の「雪」に懸かる枕詞なので、特に意味はなし。】
 
 
 
 
 
 子供の頃は滅多に降らない雪が降れば、興奮したり雪で遊んだりしたものなのですが・・・・・
 けれどすっかり大人になった今となっては、車が動かせなくなるわ、家の前の雪掻きをしなきゃならないわで、ウンザリさせられるばかりですよ(^^;)。
 子供の時分の雪に喜んでいた純粋さや無邪気さがすっかり失われて、ただただ鬱陶しいとしか思えなくなった心境を自嘲して詠んだ歌です。
 
 
 そして本記事の次の記事は自作漢詩です。これと同じ題材を今度は漢詩で表現してみました。
 本当に漢詩は作詩が厄介で手古摺りますが(^^;)、苦労しながらもどうにか創ってみました。
 
 
 それでは次回記事もどうぞ御覧になってみて下さい。

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