YAMINABE the Second Operation

この11年間の数多くの思い出を携え、私は新たな旅へと出発します。それでは皆さん、御達者で。

第一二計 順手牽羊

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第一二計 順手牽羊







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 解題を参照すれば判る通り、この計略は二種類の意味や運用法を持つ。それぞれ仮にA型・B型に分けるとする。
 A型は敵の失点に付け込み、それを端緒に次々戦果を拡大して行くという事である。
 そしてB型はその場にあるもので、自分の利益になるものなら、何でも手当たり次第に失敬して行く、行き掛けの駄賃を摑めるだけ掴み取って行く、という事になる。
 これら二点がこの計略の趣旨である。


 上記のA型の解釈は、第五計の趁火打劫と趣旨が若干被る。
 それでも強いて区分するのであれば、相手側の弱り具合や失点の規模であろうか。
 趁火打劫策では敵陣営内部に、何らかの混乱や騒擾が起きた時に、容赦なく攻撃を加えるのであるが、内紛や、党派抗争や、騒動や、疫病等と、その生じた混乱や騒擾の規模が、比較的大きく目立つものである。
 つまり誰の目にも明らかに見える類のものである。


 それに比べるとこの順手牽羊策では、相手の些細なミスや一瞬の油断や隙と言った、ほとんど目立たない事柄に付け込むので、誰の目からも明らかに穴が見える訳ではない。
 即ちよく注意して観察してないと、あっさりと見逃してしまいそうな失点や綻びを捉えるのである。


『韓非子(かんぴし)』の中の第二十一篇『喩老篇(ゆろうへん)』に、次の一節がある。


『千丈の堤(つつみ)は螻蟻(ろうぎ)の穴(いっけつ)を以て潰(つい)え、百尺の室(しつ)は、突隙(とつげき)の烟(けむり)を以て焚(や)く。』

【意味:千丈もの高さの大きな堤防も、僅かに螻(けら)や蟻が出入り出来る程度の、小さな穴に水が滲みただけで、最後には決壊してしまう。
 百尺もの大きな家屋も、僅かな隙間から入り込んだ煙によって焼けてしまう。】


 上記は「螻蟻潰堤(ろうぎかいてい)」という四字熟語にもなっている。つまり「ほんの些細な油断や不注意が、甚大な災いを呼ぶ。」という意味の格言である。
 だから順手牽羊策とは、この「螻蟻潰堤(千丈の堤は螻蟻の穴を以て潰ゆ)」を、軍事面及びその他の局面で実践する計略と言える。
 だがその場で咄嗟に見付け出そうとするよりは、普段から情報収集によって、相手の傷や失点を探り出し、把握しておくに越した事はない。


 そしてB型の解釈で用いるに際しては、次の三点の条件を満たしているかどうかをよく考える。


一点目は、遂行すべき本筋の目標がある事。

二点目は、その本筋の目標の脇に、容易に手に入りそうな利益が転がっている事。

三点目は、その利益を手に入れても、本来の目標達成に支障を来さない事。


 以上の三点である。
 言うまでもなく、本筋の目標を達成する事こそが重要であり、行き掛けの駄賃を掠め取って行くのは、あくまでも本筋から外れたオマケに過ぎない。
 そのオマケの方に夢中になる余りに、本命の目標の方を忘れて達成し損ねてしまうようでは、それこそ本末転倒もいい処である。だからこそ特に上述の三点目に注意する事である。


 例を挙げるなら、泥棒が家屋や施設等に侵入した時、最優先にすべきは本来狙い定めた本命のターゲット(目的物)を盗む事である。
 その途上で本命の物の他に価値のある物を見付けた時は、それを行き掛けの駄賃や戦利品として、最大限に失敬して行く訳である。
 だがそこで注意すべきは、その物を盗んでも、後で自分の首を絞めるような羽目に陥らないか?という事である。
 それを盗む事で却って本命のターゲットを盗み損ねる結果となったり、足が着く羽目になってしまうようであれば、躊躇わず手を出さないでおくべきである。


 つまり「本命の目標達成と、余剰分の利益獲得のどちらを優先させるべきか?」という事なら、言うまでもなく前者を優先すべきではある。
 だがそれを損ねない範囲でなら、「寄り道」を許容する位の柔軟性と精神的余裕を持つ事が望ましい、となろうか。
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第一二計
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順手牽羊
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じゅんしゅけんよう


手に順いて羊を牽く


手(て)に順(したが)いて羊(ひつじ)を牽(ひ)く






 詳細は不明だが、明代に著された民間小説『水滸伝(すいこでん)』の中の一文に由来すると言う。
 ある男が道を歩いていると、向こう側から牧童に率いられた、羊の大群がやって来た。
 それで男は羊の群れの中から、羊を一匹だけ盗んだ。
 その男の様子が余りに自然でさり気なかったので、牧童は盗まれた事に気付かなかった。
 そして盗まれた事に牧童が気付いた時には、羊泥棒は既にはるか遠くへ行ってしまっていた。
 以上の逸話がこの計略名の由来だと言う。






☰  ☴  ☲  ☶  ☱  ☵  ☳  ☷
 微隙(びげき)の在るは必ず乗ずる所なり。微利(びり)の在るは必ず得る所なり。
 少しく陰、少しく陽。
☰  ☴  ☲  ☶  ☱  ☵  ☳  ☷
 相手の隙を見付けたら、例えどんな僅かな隙でも、付け込んで利用する事である。
 こちらの利益になる事なら、例えどんな小さな利益でも、迷わず獲得すべきである。
 敵の不手際や失策は、例えどんなに微少なものでも上手く付け込めれば、最終的な勝利の発端を摑める。
☰  ☴  ☲  ☶  ☱  ☵  ☳  ☷

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