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私も毎日の様に見る「たらい回し」「受入拒否」という言葉には悪意を感じていました。

私が勉強させて頂いている「ある内科医の嘆息」というブログより転載させて頂きました。

実際に救急救命センターで密着取材をしたテレビを見たことがありますが、医師の判断の所まではふれず、消化不良の感じがしていましたが、下記の文章は素人でもかなり解る説明だと思います。

是非、ゆっくり読んで見て下さい。

少しは医療従事者の気持ちが分かると思います。

「受入拒否」と「受入ができない(引き受けが困難)」というのは物理的な結果は同じでも、内容は全然違うのです。

ご理解下さい。



ここから、転載しています。



以前から、医療側を非難する記事の中でマスコミに頻繁に使われている「受け入れ拒否」という言葉。どうにも異和感があった。違う言い方ではないのか?言葉は本質を伝えているのか?疑問を持っていた。

あるMLで、この件について言及したあるドクターが実に的確な指摘をしてくれていたので紹介したい。

それに加えて「姫路の吐血の患者の報道の件」についても、マスコミの批判がどうにも不条理に思えていたのだが、それについても溜飲の下がる思いのコメントを残してくれていた。

下記は、各報道機関に送った文章だそうだ。感服した。紹介したい。


「姫路の吐血の患者の報道の件で」

 兵庫県姫路市で吐血して救急搬送された男性が、18病院に断られ、搬送後に亡くなった件について、その報道をみて思うところがあり、この文章をいくつかの報道機関に送付しています。貴紙に当てはまらないこともあるかもしれませんがよろしくお願いします。

 私は消化器内科(内視鏡・肝臓)の専門医です。報道された状況からみて、受け入れができる病院がかなり限られると思いました。吐血と言えば通常は胃潰瘍を考えますが、肝臓の病気がある人(この場合は肝硬変を想定します)であれば、普通は「食道静脈瘤破裂」を疑います。静脈瘤破裂は出血量がとても多く、更に肝硬変では血小板が少なく凝固因子が減っているために出血は止まりにくく、急激に悪化します。輸血は赤血球だけでなく新鮮凍結血漿も必要となり、止血が成功した後も出血性ショックによる肝不全を引き起こし、数日内に亡くなる方も多く重篤です。再出血も多く胃潰瘍と比べて難しく専門医以外では対応不可でしょう。

 つまり、少なくとも吐血している以上は最低限内視鏡ができないと引き受けられないばかりか、既往歴から食道静脈瘤が疑われ、経験のある内視鏡医でないとそうそう引き受けることは困難だったと思われます。またそれなりの施設で設備が整い(輸血やICUなど)、その医師の手が空いていた必要もあります。
 当然引き受けられる施設が近くに見つからないこともあるでしょう。この状態がいいわけがありませんが、こういうことは構造的にあり得ることだと思います。

 今回は搬送に時間がかかったことを問題として報道されていると思いますが、多くの報道で、どうしても断った16病院を責めるようなニュアンスがあるように思えてなりません。本来はその背景にある問題点を考察すべきです。しかし断った理由を簡潔にあげた報道もあるものの、掘り下げた記事はありません。
 そもそも、当直の医師は本来は入院患者の急変に備えて泊まっているだけであり、救急外来を担当する目的ではありません。だからこそ前日働き翌日も連続して働くことが労働基準法上許されます。これらの当直の医師は、「医師の応召義務」につけ込まれて夜間の救急患者を診療せざるを得ない状況に追い込まれ寝ずに診療にあたることになるのですが、更に今回のような専門外の医師には非常に酷な件でさえ受け入れを打診されます。

 今回の件で、実際に(当直ではなく)夜間の救急を引き受けるのに十分な体制をとっていた病院はいくつあったのでしょうか。その中で、全ての病院があらゆる疾患に対して対応できるよう医師を配置しておくことは現実的には不可能だと思いますが、静脈瘤破裂が疑われる患者を引き受け可能であった病院はどこでしょうか。その担当すべき医師が怠慢で断ったのでしょうか?(それとも、静脈瘤破裂が疑われるにも関わらず専門外の医師が引き受けて、なすすべなく死亡診断書を書くべきでしたでしょうか)
 日本の医療体制は、夜間の医療を前提とした人員配置がされていません。そうした夜間医療の貧困の中で30時間以上の連続勤務となっても、当直医は奮闘して命のインフラを支えています。しかしその構造的な不備故に起こる結果まで心ない記事で濡れ衣を着せられています。
 当直医がその場その場で頑張ってなんとかするのではなく、システムとして救急患者に対応できるように整備しないと、根本的な解決になりませんし、安心してその地域に暮らせないと思います。今回の一件はそのように促すことができる一例だと思います。現場のつるし上げが目的ではないと信じたいですが、大本営発表のような同じような記事ばかりでがっかりしています。

 更にいえば、一部の報道機関では「受け入れ拒否」という間違った言葉で報道しています。診療が不可能であることと、拒否であることは意味が大きく違います。少なくとも受け止め方は全く違います。一般の方と医療関係者は敵対する間柄ではありませんが、こうしたマスコミによって対立軸へ誘導されています。診療できるのに拒否したというのであれば対立も生じますが、対応が不可能という構造的問題をあぶり出した記事であったのであれば、市民と医療機関が協力してこの難題を改善していく方向へ発展的に議論をすすめることができます。
 マスコミにはこうした事例を挙げた上で、論点を整理していただき、是非医療と社会との架け橋になっていただきたいです。それが報道の本来の使命ではないでしょうか。
(蛇足ですが、ディスニーランドは週末になると入場制限になることがありますが、「○万人を入園拒否!」と報道したらいかがでしょうか?)
 勤務医は疲弊しています。僕自身も30時間以上寝ずに働かされる事に耐えられず、急性期病院を去りました。あの悪条件を耐えるには、せめて患者さんとの関係は、最近の報道で差し向けられたような疑いあう関係ではなく、いたわり合い、共に病気と闘う同志でありたかったと思います。

 蛇足ですが、この患者さんは肝疾患を患って3年前まで通院していたようですが、もし肝硬変の患者であって3年間受診せずに放っておいたとしたら、それが亡くなった原因だと思います。肝硬変患者が定期的に食道静脈瘤の検査をすることは常識です。静脈瘤があれば対応可能な病院へ紹介され通院加療していたことでしょうし、緊急時の対処法は検討されていたはずです。
 今回の件で救急の不備を改善する話は結構ですが、本来救命救急というのは患者のわがまままで救えるような夢のシステムではありません。当然かかりつけがない急な病気もありますし、たとえ不摂生の患者さんであっても対処します。しかし医療システムが危機的状況の中で、市民の側の協力なくして運営できるわけがありません。まして、そこで奮闘する医師たちが、そうした非協力的な方々故にリスクが高い状態の当然の帰結(疾病による死)の責を負うのは気の毒です(たとえたまたま受け入れまでに手間取ったとしても)。
 本題とは関係ない話で、反感を買う意見かと思いますが、物事の一面だけしかとりあげない記事をみることが多く、付け加えさせていただきました。

閉じる コメント(7)

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マスコミのことをすこし書こうかなと思っていたところでした。
この医師の方、見事です。直接マスコミに投書するというやり方は、とても効果的ではないでしょうか。
やはり、ブログは、あまりマスコミ人には見られないか、もしくは見ても論戦に入ってこようとはしないのではと思います。ブログは賛同者が集う場だからです。もちろんログインせずの書き逃げもすこしはありますが、それは掲示板の比ではないと思います。それに、ブログは匿名性が保たれていますので・・・
本田先生も市民に向かって「署名する労力と時間があったら、マスコミにどんどん投書などしたほうがすごく効果的です。おかしいという報道があったら、文句言って終わりではなくて、マスコミにアピールしてください」と力説していました。

読者の反響というのは、たとえ返信来なくても、だれかは必ず見ているのです。その数が多ければ多いほど、無視できなくなります。

「マスコミには・・・是非医療と社会との架け橋になっていただきたいです。それが報道の本来の使命ではないでしょうか。」その実現のためには、一人一人が働きかけることだと思います。

2008/1/10(木) 午後 9:50 [ kya*mr2*xan*ia ]

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それと、前書こうと思っていたのですが、「たらいまわし」「受け入れ拒否」などの表現ですが、未確認ですが、最初の段階では「」などをつけて通称として扱っていたのでは・・・。自社ではそう言っていないけど、他でそう言っている人がいるよ、現象から見るとそうなるよ、という意味でつけます。でも、それはマスコミの常識であって、「」の有無は、読者としては、マスコミがそういっているととりますよね。
産経の論説で「」がとれて「たらいまわしについては・・・」と、て論じていました。これはもう、書いた人がそう認識してるってことですね。

タブロイド紙のように、そう書けば人目をひくというふうになってしまっており、忸怩たる思いがします。
「受け入れ拒否」確かに不可抗力に使う言葉にしては変です。
ただ、見出しの文字数などが決められており、どうしてもそういう使い方をせざるを得ないのでしょうが、それだったら「受け入れ不能」でいいと思いますし・・・
どの新聞社にも校閲部があります。編集部長とかではなく、「校閲部長宛」にしてピンポイントで攻めてみてもいいかも、と今思いつきました。

2008/1/10(木) 午後 10:02 [ kya*mr2*xan*ia ]

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kyazmr2さん:コメントありがとうございます。
通称で使うのも?ですが、動詞で使う場合が多く、明らかに悪意を感じます。
総じて無意識に使ってしまうのでしょうが、当事者にとっては断腸の思いで搬送を受け入れられないことも多く、受ける印象は最悪です。
少し前までは、面白可笑しく書いているようなモノも見受けられました。
良識のある人が多いと思いますので、きっちりと取材して記事にして欲しいと思います。

2008/1/10(木) 午後 10:15 瑞山

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母が吐血した時もそうでしたが、姫路ではなく東京都心部ですら吐血患者を受けて入れてくれる施設を探すのに救急車内で30分以上かかりました。
内視鏡や、オペなどの緊急手技が時間外にできる施設は、地方だけでなく日本全国で足りていないのだと実感しました。
内視鏡ができる医師はもっとたくさんいると思うのですが、
内視鏡ができる施設から医師が撤退していることが一因になっているのではないかと思います。
なぜ医師が撤退するかというと、上の先生がおっしゃっている通りです。

2008/1/12(土) 午前 10:34 おとぼけjoy

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joyさん:都心部も患者さんが多いので、結局、施設数(医師数)が間に合わないのですよね。
国の主導で間違った方向に行っていると言うことをC型肝炎問題のように認めて、謝罪はしなくても良いから、正しい方向に導いて欲しいと思います。

2008/1/12(土) 午後 6:10 瑞山

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http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20071220
こちらの医師のブログもなかなか興味深いですよ。

2008/2/22(金) 午前 11:10 [ xyzzy ]

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xyzzyさん:ご連絡ありがとうございます。
いつも良識のあるブログでよく訪問しています。
一般の方も、ジャーナリストさんも訪問して欲しいですね。

2008/2/22(金) 午前 11:59 瑞山

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