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オオミズアオがいましたよ。 コイツも道路沿いの街灯に誘引されてしまった個体です。 路面でのた打ち回っていたので、捕まえて近くにあった木の枝に止まらせたところを撮影しました。 今回はやらせ写真なんです。前翅の中央部に擦れた跡があるのは、ぼくがつまんだからなのです。 きっと、本種をご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。 かなり有名な蛾ですし、キモーイキモーイと毛嫌いされることも他の蛾に比べ少ない(多分)という、 珍しい蛾でもあります。 シンジュサンほどではありませんが、開張は100mmを超える大型種。目立ちますね。 幼虫はバラ科やブナ科、カエデ科など、広範な広葉樹を食べて育ちます。悪食な方かもしれません。 本種の特徴はなんと言っても、この色彩でしょう。 ほぼ全体が青緑色〜黄緑色がかった白色という、大胆なデザイン。「ほぼ全体」というのがミソで、 前翅の前縁から前胸部、そして各肢にあしらった紅色、各翅にある光沢を持ったような目玉模様が いいアクセントになっています。 アールの効いた柔らかい感じの形態とあいまって、涼やかで高貴かつ妖艶な雰囲気で、さながら 羽衣を羽織った天女といったところでしょうか。 世界には本種に近縁(姿かたちもそっくり)な種が何種かいるわけですが、そのうちの1種の学名は、 Actias artemis といいます。また別の似たような種は、Actias seleneと名づけられています。 両者の種小名「artemis」「selene」には共通点があります。どちらも神話に登場する、月の女神の 名前(アルテミス、セレーネ)なんです。 月の女神とは言い得て妙です。ずいぶんと粋な分類学者さんがいらっしゃったのですね。 また、この仲間を総括する呼び方として、Moon moth というのがあります。 さらには、学名をActias luna(=月)、通称をLuna moth という種もいます。 どうも西洋の文化圏では、この蛾に対して、月のように涼やかで神秘的なイメージを持つ人が多い ように思われます。 和名の「大水青」という、大きさと色味を表した種名との対比も面白いですね。 対比が面白いといえば、中国名は欠かせません。 (というか、和名、英名以外では中国名しか知らないんですけど・・・) 中国ではオオミズアオの仲間のことを何と呼ぶか。 調べたところ、○○(←長尾、緑尾といった語句が入ります)大蚕蛾と呼んでいます。 オオミズアオを含むヤママユガの仲間は、カイコのように糸をつむぎ、繭を作ります(カイコとは 別の分類群ですが)。 その繭を使って、絹糸を作り出すこともできます。ゆえに同類視されることもあるわけです。 日本ではヤママユガ等のことを、飼育下にあるカイコ(=飼い蚕)に対し、山に住む野生の蚕の意で、 ヤマコ(山蚕)と呼んだりします。 中国でもどうやら同じ傾向にあるようで、ヤママユガの仲間を大きな蚕=大蚕蛾としています。 ということはつまり、中国では、その種の生態的な特徴(に基づいたある種の分類)を表した種名を 用いているわけです。 お国が変われば感性も変わり、生きものの呼び名も変わることも多いんですよね。面白いなぁ。 ぼくの個人的な好みでは、月をモチーフにした種名がいいなと思います。 形態や生態を織り込んだ和名・中国名も捨てがたいのですが、本種とその仲間を月になぞらえた センスには脱帽です。 Moon moth、日本風に表現するとどうなるんでしょう。直訳して、ツキガ・・・では無味乾燥です。 ここはひとつ、ツクヨミガとか、イザヨイガとか、そのあたりがしっくりくるかなぁ。 いやいや、しかしまあ、オオミズアオというのもやっぱりいい種名ですね。和色の名称のようで、 いいセンスしてますよ。 さてさて、本種の目玉模様は小さいながら、かなりくっきりはっきりしています。 瞳孔?にあたる部分は細長く、ネコのようでもあり、マムシのようでもあります。 しかも4つもあります。二つしか目玉模様を持たない種に比べ、効果も二倍あるんでしょうかね。 っていうかそもそも、この白い翅に目玉模様という意匠、鳥から見るとどう映るんでしょう。 保護色の中に浮かぶらんらんとした目玉よりも、インパクトに欠けるような気もしますが・・・。 補足
じつはオオミズアオもちょっと前までは、Actias artemis という学名でした。 しかし、最近になって精査を進めたところ、Actias aliena(=他の、外の〜の意。西欧から見て、 はるか遠い地域に産することから、外界の、異国のActias属の蛾というふうな命名になったんで しょうかね?)であることが明らかになりました。 オオミズアオ=月の女神様という面白いネタがひとつ使えなくなってしまって、ちょっと残念に 思ったりしますよ・・・。 |
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こんばんは。
オオミズアオも子供の頃何回か見かけましたけども、蛾のくせに妙に綺麗な翅が逆に不気味で怖がった記憶があります。
よく見ると、脚も桃色で綺麗ですね。
因に、僕は蛾に関しては今でも嫌悪感を拭い去れないのですが、ドクガの仲間以外なら蛾の成虫は安全でしょうか?
2008/8/5(火) 午前 1:44 [ Dobo ]
写真も素敵なのでしょうが、オオミズアオの翼の先が細く垂れ下がっているのところが、何とも優雅に見えます。この部分がなければただのありふれた白い我に過ぎないように見えます。なにか貴婦人のような雰囲気を感じます。
2008/8/5(火) 午後 1:53 [ hakkakesuposuka ]
Doboさん、こんばんは。
蛾がお嫌いですと?一度はまれば病み付きになること間違い無しなんですが・・・。
ドクガ以外にも、カレハガの成虫などにも毒毛が残存していることがあるので、お気をつけください。
hakkakesuposukaさん、どうも。
後翅の尾状突起は平面的でなく、多少よれが掛かっているような感じもするんです。品のいいドレスのリボンやスカートのひらひら感と似ているかも。
ちなみに、オナガミズアオというもうちょっと尾状突起が長い種、外国にはもっと長い種がいたりします。後者はもはや貴婦人という範疇を超えて、妖精のようにも見えるかと。
2008/8/6(水) 午前 0:42 [ ずく無し88 ]
はじめまして。突然すみません。
わたしも蛾が苦手なんですが、特にこの種類は大きさが半端じゃないので怖いです。色だけは綺麗だなっていつも思っているのですが……。アパートの廊下にこの時期いつも出るんです。ちょっと怖くてなかなか近くを通る気になれません(汗)
2010/6/21(月) 午後 0:42 [ リサキ ]