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昨今の鳥獣被害の原因は、狩猟の規制が強すぎるゆえに捕獲圧の低下を招いた
からだという意見がある。
守り過ぎて、増えすぎた。確かに一理ある。
明治以降の急激な捕獲圧の上昇、個体数の低下を懸念して、狩猟規制を強化した
こと自体は妥当な施策だったと思う。
問題はそのあとだ。個体数の回復に応じて規制に緩急をつければよかったわけだ。
しかし実際にそのように運用することが簡単なわけでもないだろう。
まずもって、そもそも、正確な個体数の把握ができなかったのだ。
もし、1年おきに信頼性の高い個体数が把握できるという状況であれば、結果は
もっと違ったかもしれない。だが現実はそうはいかなかった。
技術面の問題があった。
動物の数を数えるのは大変だ。山に分け入って一頭ずつ数えるなんていうことは
物理的に無理だ。だから生息痕跡とか、一定の限られたエリアで数えた結果など、
限定的な情報をもとに推定していくしかない。
しかし、どのようなデータを収集し、どのような計算で推定を行なえばよいのか、
確立された手法は無かったわけだ(今でも、研究途上と言える)。もちろん今の
ように便利な道具も無かった。
予算面の問題もあっただろう。
かつては、シカが将来、農業被害や森林生態系へ被害をもたらすことになるとは、
あまり考えられていなくて、多くの人があくまで保護獣としての認識をしていたと
想像できる。保護のための規制は既に行われていた。
そんな状況だから、調査と言っても、何か切迫した事情の下で実施されるわけでは
なかっただろう。それでは予算配分の優先度は下がり、大きな額は見込めないわけだ。
また、一度設定した規制を緩和するということは、お役所にとっては、勇気のいる、
なかなかの大仕事だ。規制緩和によって、不測の事態が生じる可能性もあるから、
慎重すぎるほど慎重に検討する。判断材料を求める。
しかし、当時、シカの個体数の変化を示す詳しいデータは乏しかった。そうなると、
ある意味ギャンブル的な決断を迫られる。シカの絶滅のリスクを抱えてでも規制緩和
すべきかどうか。…まあ、先送りしたくなるのだろうなと思う。
そう考えると、野生生物の管理には、まずは基礎研究・基礎調査の部分をしっかり
考える必要があったのでは?ということに気付く。
野生生物管理の戦略、戦術を考えて、制度に活かしていこうとするときのベースに
なる情報を、もっと集めないといけない。
狩猟規制が失策だったというよりは、そういった基礎的な部分がおろそかであった、
というのが問題の根っこなのかもしれない、と、最近思うようになってきた。
しかし、「現在はとるに足らないと思われる生物について、将来役立つかもしれない
ので巨額を投じて調査したい、その調査は長期的(永続的)に続けたい」という要望に
対して、快くOKを出してくれる人は、今でもなお、少数派な気がする。
それでやっぱり、野生生物の管理というのは、後手に回ってしまうのだろうと思うわけだ。
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