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我が家の周辺でマユタテアカネがうろうろしています。
裏手の藪と水の途切れないU字側溝は、食堂兼休憩所、ときには繁殖場と
して(多少なりとも)機能するわけですから、常に数頭が居つくのもおかしくは
ありません。生きもの好きにとっては、我が家は恵まれた立地にあるのかも
知れません。
でも、こういう立地は、蚊の発生源でもあるという諸刃の剣…。
で、オオシオカラトンボとマユタテアカネとヒメアカネしか来ないと…。
マユタテアカネと言う種名は、顔に眉に見える黒い斑があるアカネトンボの意。
アカネトンボの「アカネ」は、赤い染料の原料で、色名でもある「茜」ですね。
こういった話をすると、ごく稀にですが、
「眉が立っている=怒った顔に見えるはずだが、このトンボの顔はなんと暢気な。
しかも眉毛など麻呂眉毛ではないか。ネーミングセンスを疑わざるを得ない。」
等とおっしゃる方がいらっしゃいます。
日本語って奥が深いんですよね。〜を立てると言う言葉は、ものを直立させる
と言う意味だけでなく、〜を後押しするとか、〜をこしらえるとか、いろんな
用法があります。
眉を立てるというのは、眉を書くとか、眉を整えるとか、そういうニュアンスで
用いられているのでしょう。
また単に「マユアカネ」とすると、眉っぽい模様があるだけのトンボをイメージ
しますが、「マユタテ」とすると、トンボ自身ががんばって自分の顔に眉毛を
こさえているような、滑稽というか、小洒落た感じがしませんか?
だから、本種の命名センスは、なかなかのものだと思うのです。
ちなみに、「眉を立てる」には隠語的な意味もあるそうです。
江戸時代、既婚女性はお歯黒を塗り、眉を落としていました。
未婚女性はお歯黒は塗っても眉を落とすことはしません。
遊郭にいる女郎は、誰か一人の奥さんではないので、未婚女性と同じく、眉を
落とすことはしませんでした。
女郎が眉を落とすのは、いい旦那にめぐり合って、夫婦になり、足を洗ったとき。
その女郎が、再び眉を立てるシチュエーションとは…
と言うことで、眉を立てる=足を洗った女郎の出戻り、再度働かせる ということ
なのだそうです。
本種の種名に、そこまで奥深い意味があるとは思えませんが、もし命名者がその
ことを知っていたとしたら、これは女郎出戻りトンボという意味になってしまいます。
ちょっと違和感を覚えますが、トンボの成虫はいつもお互いを求めて(♂の一方的な
求婚も多いのですが)飛び交っているのを思えば…
素敵な旦那を見つけるために、仲睦まじい夫婦になるために、もう一度眉を立てて、
郭で待ってるわ。+アカネトンボ=マユタテアカネ。
などという廃頽的ロマンチスト解釈も面白いのかもしれません。
アホかぼくは。
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