ぼくとがま…

生きものについて、ぼちぼち。

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ニワカ猟師?

とある猟師から、狩猟者が増えるのはいいんだけど、困ったこともあるんだよね
という話を聞いた。

初心者がイノシシ対策にくくりわなを仕掛ける。
熱心なことだ、とどめを刺すのに困ったら、手伝ってやろうとも思う。
しかしワナの仕掛け方を見て、考えを改めた。
くくりわなを固定している先が、貧相な木の杭なのであった。
イノシシが掛かれば、容易に抜けてしまう。
妙な金属製の仕掛けをくっつけて気が立っているイノシシは、何をするか分からない。
そんなこともわからずに狩猟をやろうというのは、危険すぎる。
そんな「ニワカ猟師」なら、増えない方が良い。

というわけだ。

もちろん新規に狩猟に参入した人たちが皆、そういう問題を起こすわけでは
ないのだろう。

が、捕ろうとする相手の力量を見誤るのは危険だ。
鳥獣憎しで、気持ちだけが空回りして、鳥獣の特性を知らずに取ろうとする
のは、ちょっと、無茶というものだ。。

鳥獣に対する知識と、その捕獲に関する技術は、狩猟免許の試験勉強だけでは
当然、身につかない。腕のある猟師をはじめ専門家から教わるもよし、それを
ベースに自分で試行錯誤するもよし、かなり勉強と実践をしないといけないの
だろう。
しかし、巷にあふれる学習塾やカルチャースクールのようには、学びの門戸は
開かれていない。そこがある意味、腕の良いハンターを育てていく上でのネックだ。


昔であれば、地区の猟友会に入り、既存の猟友会員は近所の見知った人であって、
地域ぐるみの徒弟制度的な枠組みの中でいろいろと学べたのだろうと思う。
しかし今の時代、誰しもがそういう社会環境の中にいるとは限らない。
狩猟を始めようと思っても、身一つでそういうところに乗り込んで行く勇気を
持った人もそう多くはあるまい。


某大学では狩猟サークルが若手ハンターに門戸を開いてくれている。私の行って
いた大学でもこういうのがあるとよかったなと思う。
同レベルのつたない技術、同年代、そういう仲間と一緒に狩猟に参入できる機会が
あるというのは、なかなか心強いことではないか。
猟友会や自治体で、そういうスクーリングをもっと展開してみるというのも、アリ
じゃないかと思う。

引っ込み思案だが責任感があるゆえに孤軍奮闘で、見よう見まねでやってみて、
ニワカ猟師と呼ばれて終わるより、間口を広げて仲間と楽しく学んで腕も上げて
もらうという方が、精神衛生上もよさそうだ。
古来の猟友会組織のみに頼らず、猟友会と連携しながらも新たな狩猟者コミュニティ
を作っていく、そういう考えが新規狩猟者、特に若手ハンターの確保に必要になって
くるかもしれない。そんな妄想を寝る前にしてみたり。

シカやイノシシの天敵になるオオカミを再び日本の山野に放てば、失われた
生態系バランスは戻り、鳥獣被害もなくなるという意見がある。

なんとなくそんな気もしないではないが、よく考えるとそううまくも行かない
であろうと思い始めるわけ。


日本には、既に在来のオオカミ:ニホンオオカミはいない。
明治時代に絶滅してしまった。

ニホンオオカミは、かつての日本の森林生態系の中では、最上位の捕食者で、
シカにとっての一番の天敵だっただろう。
もっともそれは、野生生物の中では、の話。

人がシカ等を積極的に捕獲してきたのも事実だ。貝塚からも骨が多数見つかる
ことを考えれば、シカとの付き合いは少なくとも何千年も前から始まっている。
有史以降シカを狩っていた記録はある。

だから、何千年前から明治時代にかけては、シカの捕食者はヒトとオオカミの
2者がいて、オオカミの影響の方が大きかった時代もあれば、人の方が捕食者と
しては強烈な存在だった時代もあっただろう、そう考えるのが妥当では。

しかしそれでも、農業被害は生じていた。里山という人間が出入りするバッファ
ゾーンがあって、今より積雪も多いなど、シカにとって不都合な条件もそろって
いたのに、それでもなお農業被害はあったわけだ。

人の関与が無かった時代は、シカにとってはオオカミだけが天敵で、その状態でも
バランスが取れていたのでは?という意見もある。
しかし人がシカ狩りをしていなかった時期というのは、すなわち人が殆どいないと
いう時代だろう。
そこまでさかのぼると、最終氷期以前ということになる。気候はもっと寒冷で、
生物相も現代と異なり、ナウマンゾウが闊歩するような時代だ。今とは別の生態系
が成立していた。
そんな時代に、シカとオオカミの良好な関係が成立していたとしても、それを現代
に再構築しようというのは無理な話だ。

だから、オオカミの放獣だけですべてが解決するというような、単純な話ではない
わけだ。そういう楽観論には大反対だ。


純粋なニホンオオカミはもういない。別の亜種を持って来るしかないが、かつての
ニホンオオカミのように振る舞ってくれるかは、未知数だ。また、かつてのニホン
オオカミの振る舞いも、実はよく分からない。さてどう考えたものか。

リスクはあるだろう。家禽家畜への被害、人への傷害などの懸念は払拭できないし、
食ってほしくない鳥獣ばかり狙われる可能性もある。しかし必ず、そういう被害を
必ずもたらすとも言い切れない。被害の程度もわからない。

リターンもよく分からない。本当に日本のシカやイノシシの個体数制御に貢献して
くれるか、それはまさに、やってみないとわからないという状況だろう。
大活躍かも知れないし、不発かも知れない。

現状ではハイリスク・ハイリターンどころか、不明リスク・不明リターンという、
何とも手を出しづらい代物だ。だから放獣の是非はまだ判断しない方が良かろう。
判断しろと迫られれば、安全側に立って、やめておけばとつぶやくしかない。

日本の森林に上位捕食者を復活させるということ自体は、検討の余地はあると思う。
ただし、農業被害の救世主というような乱暴な位置づけではなく、人の関与も踏ま
えたうえでの望ましい森林生態系の再構築という観点で、じっくりアカデミックな
議論をして、調べて、その妥当性を探っていけばいいのではなかろうか。

昨今の鳥獣被害の原因は、狩猟の規制が強すぎるゆえに捕獲圧の低下を招いた
からだという意見がある。

守り過ぎて、増えすぎた。確かに一理ある。
明治以降の急激な捕獲圧の上昇、個体数の低下を懸念して、狩猟規制を強化した
こと自体は妥当な施策だったと思う。

問題はそのあとだ。個体数の回復に応じて規制に緩急をつければよかったわけだ。


しかし実際にそのように運用することが簡単なわけでもないだろう。

まずもって、そもそも、正確な個体数の把握ができなかったのだ。
もし、1年おきに信頼性の高い個体数が把握できるという状況であれば、結果は
もっと違ったかもしれない。だが現実はそうはいかなかった。

技術面の問題があった。
動物の数を数えるのは大変だ。山に分け入って一頭ずつ数えるなんていうことは
物理的に無理だ。だから生息痕跡とか、一定の限られたエリアで数えた結果など、
限定的な情報をもとに推定していくしかない。
しかし、どのようなデータを収集し、どのような計算で推定を行なえばよいのか、
確立された手法は無かったわけだ(今でも、研究途上と言える)。もちろん今の
ように便利な道具も無かった。

予算面の問題もあっただろう。
かつては、シカが将来、農業被害や森林生態系へ被害をもたらすことになるとは、
あまり考えられていなくて、多くの人があくまで保護獣としての認識をしていたと
想像できる。保護のための規制は既に行われていた。
そんな状況だから、調査と言っても、何か切迫した事情の下で実施されるわけでは
なかっただろう。それでは予算配分の優先度は下がり、大きな額は見込めないわけだ。

また、一度設定した規制を緩和するということは、お役所にとっては、勇気のいる、
なかなかの大仕事だ。規制緩和によって、不測の事態が生じる可能性もあるから、
慎重すぎるほど慎重に検討する。判断材料を求める。
しかし、当時、シカの個体数の変化を示す詳しいデータは乏しかった。そうなると、
ある意味ギャンブル的な決断を迫られる。シカの絶滅のリスクを抱えてでも規制緩和
すべきかどうか。…まあ、先送りしたくなるのだろうなと思う。


そう考えると、野生生物の管理には、まずは基礎研究・基礎調査の部分をしっかり
考える必要があったのでは?ということに気付く。
野生生物管理の戦略、戦術を考えて、制度に活かしていこうとするときのベースに
なる情報を、もっと集めないといけない。

狩猟規制が失策だったというよりは、そういった基礎的な部分がおろそかであった、
というのが問題の根っこなのかもしれない、と、最近思うようになってきた。


しかし、「現在はとるに足らないと思われる生物について、将来役立つかもしれない
ので巨額を投じて調査したい、その調査は長期的(永続的)に続けたい」という要望に
対して、快くOKを出してくれる人は、今でもなお、少数派な気がする。
それでやっぱり、野生生物の管理というのは、後手に回ってしまうのだろうと思うわけだ。

おおよその推定は出来ているが、正確な個体数は不明である。

特定哺乳類生息状況調査(H22、環境省)によれば、日本全国を対象とした場合、
ニホンジカは既存情報の集計で954,224〜1,811,934頭(中央値1,342,584頭)、いろんな
パラメータを駆使して、階層ベイズ法を用いて数値をはじくと684,971〜8,597,522頭
(中央値1,686,294頭:90%信用区間、2007年度)とのこと。
イノシシについては同じく階層ベイズ法により223,120〜1,207,428頭(中央値417,205頭:
90%信用区間、2007年度)という結果が出ている。

これは、様々な既存のデータを寄せ集めて検討を加えたものとして理解しておく必要が
ある。全国一律の現地調査をあらたに行ったわけではない。さすがにそのようなお金も
時間もなかなか無いだろう。
 
現場で実施されているそれぞれの調査についても、基本的な手法は確立されてきてるが、
精度や効率の向上はいまも研究段階にある。イノシシのように手法が未確立のものもある。
正確な数字を導くことは重要だけど、現段階では、そこまで至っていないのが現状。
基礎調査・基礎研究の重要さが思い知らされるが、そういう分野に多数の研究者とお金を
呼び込むのはなかなか難しいようだ。

幅のある推計値のどこに真実の値があるのかも、色々と考えてみないといけない。

例えば、イノシシは2008年、2009年には全国で30万頭/年の捕獲が行われていて、さらに
2010年の暫定値では、捕獲頭数は40万頭を超えている。

上記の階層ベイズ法による推定個体数の中央値は約42万頭(2007)だが、それが真実の
値だとすれば、ここ数年の捕獲ペースで行けば、個体数はすでに減少に転じているはず
である。自然増加率を低めに見積もって計算すれば、もう絶滅という解も出てくる。

でも依然としてイノシシによる農業被害は減らない。おそらくまだまだ、相当数のイノ
シシが生息しているのだろう。そうすると、イノシシの真の個体数は、中央値の42万頭
よりも上の方にあったということなのだろうな、という気はしてくる。
でも具体的な数字はわからない。うーん。

江戸時代以前にも、鳥獣被害があり(=多数のシカやイノシシがおり)、
当時の農民が頑張って対策をとっていた。
それはかなり確実なことだ。


よく言われる「昔はこんなに鳥獣被害は無かった」という声の「昔」とは、
いったいいつのことか。
今生きている人にとっての昔、遡っても60年、70年前とかそのくらいだろう。

その頃は捕獲圧が過度にかかって、鳥獣は今までになく減少していた時代だ。
そのあとも個体数の回復にしばらくの時間を要した。
シカやイノシシが全国的にあまりいないという、日本の歴史の中でも、ある
意味イレギュラーな時代だったわけだ。農業にとっては(鳥獣対策に労力を
割かなくても良いという意味で)幸福な時代であったともいえる。

そして、農業には鳥獣対策がつきものであったという記憶はなくなる。
鳥獣対策に関する意識や知恵は、必要なくなり、しぼんでしまったわけだ。
農家個人も、農学者も、行政も一様にそうなってしまったのではなかろうか?
そして、シカやイノシシによる被害はあまり発生しないという前提での農業が
展開された。

そこに鳥獣が個体数を回復(反動がついて以前より実際に増えている可能性
もあるかもしれないが)し、奇襲をかけてきた。寝首をかかれたようなものだ。

そういうことだと思うのです。


で、ここから反撃するにはどうすればいいか?

単純に考えれば、以前の取組みを再開すればいいわけだ。
山から下りてくる鳥獣に対しては、防護壁を築き、脅して追払う。
防戦一方では耐えられないので、積極的な捕獲に打って出る。
先人もそうやって戦ってきた。我々もできることは同じだ。

技術が発達した現在、もっと効果的な対策もとれるだろう。ただの石垣では
なく電気柵、竹のシシ脅しではなくスチールの爆音機、火縄銃でなく精度の
高いライフルと散弾銃が使えるわけだ。

しかし、昔の時代にはどうしても劣るものがある。
それは、マンパワーだ。中山間に人がいない。何十、何百人で山に分け入って
獣を追うとか、そういうことができない。少ない人員、しかも多くは高齢者と
いう状況は、あまりに厳しい。

山林の様子も違う。
人間にとっても鳥獣にとってもバッファゾーンだった里山は、植生が遷移して
すでに奥山の様相で、鳥獣のテリトリーになっている場所も多い。


そんな感じで、ある意味逆境と言えるような状況を、技術やら制度やら、ある
いはお金、熱意、何でもいいからそういうものでカバーして、何とか盛り返せ
るか?ということになる。

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