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二百九回目(クマゼミ)

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クマゼミが羽化していましたよ。

熊のように黒くて大きいから、熊蝉。
あるいは、西日本に分布の中心をおくから、九州をイメージして、球磨蝉。
どっちでしょうね。「熊」の方が説得力があるでしょうか。

日本の本土においては最大になるセミで、全長60〜70mmほどになります。
体が大きいだけあって、鳴き声もなかなか喧しいものです。
大きな声でシャーシャーシャーシャーと鳴きますが、これを聞くと体感温度が
2℃ほど上がるような気がします。ぼくの頭の中では、アブラゼミの鳴き声に
並ぶ猛暑の象徴になっているようです。


どうやら本種は、分布を北進させているようですね。
地球温暖化の流れに乗じているのか、どこかの個体群が寒さに馴化したのか。
どちらでしょう。前者かな。

この写真を撮ったのは、山間部のちょっと標高の高い場所なのですが、かつては
そんなにクマゼミを見ることがなかったのだそうです。
ところが今日では、ばっちり定着して、羽化の様子さえ見せてくれます。
島原半島の沿岸部から、だんだんと中心部=高標高地に分布を広げているのは
確実なのかもしれません。うーむ。


成虫は黒い体躯に透明な翅をもっていますが、羽化直後は他のセミたちと同様、
白色と淡い青緑色を基調とした、何とも美しい色彩。
もしこのまま空を飛んでいたのであれば、人々の評価もまた違っただろうにと
ふと思ってしまいます。

しかし、生きものの色彩は人の目を楽しませるためにあるのではないんです。
そう、昆虫たちは、自分の色彩が人間にどう評価されているかなんて、知った
こっちゃありません。
地味な色で捕食者の観察眼をやり過ごすのも、派手な目玉模様で威嚇するのも、
ベイツ型擬態で厄介者になりすますのも、言わば生き延びるための工夫。

そこに人間の美的価値観を当てはめて、綺麗だとか汚いだとかいう評価を下す
のは、まったくもって見当違いもいいところです。

昼行性のクマゼミとしては、人にどれだけ褒められようとも、天敵に見つかり
やすい白っぽい体のなんてものは、願い下げでしょう。


しかしながら、そういうふうに理解しつつも、やはり綺麗と思うものは綺麗と
思ってしまうんだから仕方がない。

この辺のアンビバレンツは、なかなか解消しそうにないですねぇ。
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エゾカタビロオサムシがいましたよ。

赤銅色の綺麗なオサムシですね。

エゾと聞くと北方に棲む種に思えますが、本種は全国的に分布しています。
なんでエゾなんだろう。はじめに東北あたりで見つかったからでしょうか。

カタビロというのは、肩が広いという意味。鞘翅の元の方の幅が広くて、
肩幅が広く(頭部を顔に、前胸部を首に見立てれば、鞘翅の基部あたりが
肩ということになります)見えるところからでしょう。

本種はオサムシの仲間にしては珍しく、飛ぶことができます。飛ぶための
丈夫な後翅とそれを動かす筋肉を格納する都合、肩幅が広くなっている
ようです。

灯火の下にたくさん集まるのも、やはり飛んでいるうちに光に誘われて
しまったからなのでしょう。

しかしながら、なかなか飛んでいるところを見かけません。
逃げる際に飛ぶだろうと期待し、突っついたり行く手を遮ったりしても、
高い機動力を有する6本の脚でセカセカと走って逃げてしまいます。

一度きちんと、本種が飛び立つところを見てみたいです。


本種もオサムシらしく肉食で、灯火の下では弱った昆虫や、車に轢かれて
死んでしまった昆虫などを食べているようでしたが、調べてみると本来は
蛾の幼虫を好んで捕食するようです。

ただ、たまには植物質のものも摂るようです。
灯火の下で誰かが仕掛けたバナナトラップ(たぶん)が破けていて、地表に
発酵した果肉がこぼれ落ちていたところ、本種がやってきて一舐め二舐め
していたところを先日見ました。

その時の写真はこちら。既に逃走体勢に入っていますが…。
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そういえば、灯火の近く以外では、なかなか見かけないように思います。
他のオサムシ類のように、林床を徘徊しているところや、石の下や落ち葉の
中に潜んでいるところを見かけることもないような。

地表で見かけない、蛾の幼虫を好む、飛ぶ、灯火に集まるとくれば、きっと
本種は夜行性かつ樹上性の昆虫なのでしょう。

本来の生き様を観察するには、夜中に木に登らなくてはいけないのかな。
これは難儀だなぁ。

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フタオビホソナガクチキムシがいましたよ。

フタオビオオキノコやヤマナメクジのよく集まる倒木の上に、妙な模様の
コメツキムシがいるなぁと思って近づいてみると、どうやらコメツキムシ
ではありません。細長い体形は似ていますけど、頭部・前胸部のあたりが
しっくり来ません。

じゃあ何の仲間なんだろうと思い、家に帰っておもむろに図鑑をめくって
みると、ナガクチキムシ科の甲虫、フタオビホソナガクチキムシでした。

そういえば、前にもコメツキだかタマムシだか分からない、細長い甲虫を
見つけて、調べてみればナガクチキムシの類だったっていうことがあった
なぁ。当時からあんまり成長してないですね…。


フタオビというのは、鞘翅にある赤い紋が、2本の帯状の模様に見える
ところから名付けられたのでしょう。で、細長く、朽木に集まる虫だと
いうことで、フタオビホソナガクチキムシ。わかりやすいなぁ。

フタオビオオキノコほど多くは見かけませんが、あっちこっちに転がって
いる伐倒木を見て回ると、ちらほら見かけます。
普段見なかっただけで、意識的に探せば見つかる種なんでしょうね。


そういえば、こいつも「黒地に赤い四つ紋」系の甲虫ですね。

やはり、この模様を持った昆虫に共通する何かがあるのだろうか。

うーむ、分からない。
もっといろんな昆虫を見てみないと…。

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オオトモエがいましたよ。

サルトリイバラなどを食草とする、大形の蛾です。
成虫はよく樹液を吸いに来ます。この個体も、いつもの樹液スポットに食事に
来ていたものです。

こいつもオスグロトモエと同様、翅に巴模様を持っている蛾ですが、オスグロ〜
ほどきちんとした巴でもないですね。ちょっといびつな感じ。
巴模様というよりは、純粋に目玉模様に見えますね。白い縁取りが目玉を強調
しているように感じます。

開張100mm程度になるので、かなり迫力があります。天敵であろう鳥たちにも、
かなりのインパクトを与えられそうな感じがします。
人間にもかなりのインパクトを与えるかもしれませんね。

翅の中央をぐるっと貫く半円状の白いラインが、これまた見事です。
前翅と後翅にまたがっている模様ですが、合わせ目がきちっと合っています。
4枚の翅を使ったトータルデザイン、さすがです。

しかしこの白いライン、目玉模様の下方に位置しているせいか、大きな口を
「に〜っ」としているように見えます。
そう見えてくると、前胸部の盛り上がりが鼻に見えてきます。

茶色くて、見開いた目、丸っこい鼻、大きな口――。

あらら、なんかいびつなトトロに見えてきたぞ。
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ムクゲコノハがいましたよ。

いつもの樹液スポットには、ヤガの類がよく来ます。
本種もそのうちの一種です。開張90mmほどの大形の蛾です。

種名からは、ムクゲを食する木の葉のような蛾というふうに解釈しそうに
なりますが、これはどうやら間違いのようです。

本種の食草は、クヌギやコナラのようなブナ科植物か、オニグルミやサワ
グルミのようなクルミ科植物など。ムクゲを食べることはないようです。

ではムクゲとは何かというと、毛がふさふさと生えている様子のこととか。
ということは、本種名は、毛がふさふさしている木の葉のような蛾、という
意味になりますね。

毛がふさふさ…しているかな。確かに胸部〜後翅の付け根などはもふもふ
した感じがしますが、鱗翅目、特に大形の蛾って、基本的にもふもふした
奴が多いからなぁ。


前翅を閉じているときは枯葉のように見えますが、これをパッと開くと、
なんとも鮮やかな後翅が現れます。

外縁部はピンク色、中央部は黒地にやや光沢のある青白い模様。
これもやはり、目玉模様の一種なのでしょう。
真ん丸な目玉ではなく、半円状ですが、これはこれで睨みを効かせている
ような感じもしますね。

地味な蛾と思って近づいた天敵にガツンと一閃、ド派手な後翅の模様を
見せ、敵がうろたえている間にどこかに逃げるなり、翅を閉じるなりして
しまう。すると敵は獲物の位置がよく分からなくなり、あるいは怖がって、
捕食を諦めてくれる。
そういうかたちで、生き残る可能性を高めているようです。

樹液に来る個体を観察していると、たいていの場合前翅を開きっぱなしに
していますね。食事中は無防備になるから、あらかじめ威嚇体制をとって
いるのでしょうか。それとも、樹液を取りあうライバルへの牽制か。

もしかして、ぼくに対して威嚇しているのか?
それなら逆効果ですよ。
びっくりするどころか、駆け寄って来るよ。捕まえはしないけど。


ちなみに裏面は、こんな感じです。前翅表面の地味さとは打って変わって
派手な色彩。一面が橙色がかり、黒い紋をあしらってます。

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こういうところを見ると、本種は、
「地味な蛾だが、後翅に派手な模様を持っている」のではなく、
「派手な蛾だが、世を忍ぶため、人目につく箇所だけ地味になっている」と
考えたほうが、しっくりくるような気もします。

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